千夜の歌声が、徐々にか細くなり、力を失っていく。

彼女の体からは、すでに限界が近づいているのがわかる。

その表情には、もう一度歌うことができるのかという不安と恐れが浮かんでいた。

だが、光はそのすべてを見守りながら、静かに心を決めていた。

もう一度だけ、彼女に歌わせてみせる—その思いが、胸の奥で強く燃えていた。

「千夜、君一人ではないよ。」

光の声が、ふと千夜の耳に届く。

彼は迷わず、千夜の隣に立ち、彼女に手を差し伸べた。

「僕も歌うよ。君の歌を、一緒に歌おう。」

その言葉に、千夜は驚き、そして少しだけ目を見開いた。

「でも…私の歌は…」

「君の歌は、もう僕のものだ。君と一緒に歌うことで、僕たちの運命は変わる。」

光の目は、決して揺るがない。

その確かな意志が、千夜の心に深く響き、やがて彼女はその手を取った。

そして、二人は一緒に歌い始めた。

最初はおぼつかない声だったが、次第にその歌声は力強さを増していった。

千夜のメロディーと光の声が重なり合い、互いの心を震わせる。

その瞬間、歌はただのメロディーを超えて、二人を繋ぐ絆となり、運命を変える力を持っていった。

歌の力が、二人を支え、そして二人の運命を変える。

その確かな手応えを、光は感じ取った。

千夜の体が震え、彼女は最後の力を振り絞って歌い切った。

その歌声が、夜空を突き抜け、広がっていく。

光の歌が千夜に力を与え、彼女の体の中で新たなエネルギーが芽生えていった。

それと同時に、千夜の命を取り戻す力が湧き上がり、約束が守られていくのを感じた。

光もまた、その歌声に支えられ、二人の未来が輝き始めるのを見守っていた。

最後の一音が消えた後、二人はお互いを見つめ合う。

千夜の顔に、あふれるような安堵の表情が浮かび、彼女は微笑んだ。

「ありがとう、光。」

その微笑みは、すべてを超えて、二人を繋げる強い絆となった。

そして、彼らの運命は新たな道を歩み始めた。

歌が運命を変える瞬間—それは、二人が共に歩む未来への第一歩だった。