浅葱千夜は、光に心を開き始めていた。

彼と共に過ごす時間が増える中で、少しずつ自分を取り戻すような感覚を覚えていた。

しかし、ある夜、光がいつものように公園に足を運ぶと、千夜の姿がいつもと違っていた。

彼女は、歌うことができなくなっていた。

その理由を光が知ることはなかったが、千夜の変化は誰の目にも明らかだった。

かつて彼女が放つ歌声には、どこか魔法のような力があった。

その歌を聴くことで、光は自分の心が温かく包まれるような気がしていた。

だが今、その力が失われていた。

千夜は、歌を歌うことができない理由を、誰にも話すことはなかった。

彼女の中には、誰にも言えない深い秘密があった。

その秘密は、幼い頃から彼女の中に存在していた。

歌を歌うことで、他人の運命を変える力が宿っていた。

彼女が歌うことで、周囲の人々の道が明るく照らされ、未来が輝くようになる。

だがその代償は、あまりにも大きかった。

歌うことで、千夜自身の運命は歪み、次第に命が削られていった。

そのことに気づいた彼女は、歌を歌うことを避けるようになり、少しずつその力を封じ込めようとしていた。

だが、光との出会いがその気持ちを揺さぶり、心の中で葛藤が生まれ続けていた。

ある晩、千夜は静かに言った。

「私は、もう歌うことができないの。」

その言葉は、光の心に重く響いた。

彼は、千夜が歌ってくれなければ、自分がまた孤独に戻ってしまうことを恐れていた。

そして、彼女の歌がどれだけ自分を救っていたのかを、改めて痛感した。

「お願い、千夜。」

光は必死に言った。

「君の歌が必要なんだ。僕は、君の歌で救われたんだよ。」

千夜は、その目をじっと見つめ、しばらく黙っていた。

その瞳の奥に、何か決意のようなものが見え隠れしていた。

しかし、彼女は何も言わず、ただ静かに歌うことをやめた。

歌うことが彼女にとってどれほど辛いことなのか、それを理解しているつもりだったからだ。

だが、光の願いは、彼女の心に響いていた。