夕暮れ時、空は淡い色に染まり、街灯が静かに灯り始める。

白藤悠はその光景をぼんやりと見つめていた。

疲れた心は、どこか遠くに漂う雲のように軽く、重く、何もつかめないまま浮遊していた。

目の前の世界は、どこか色を失ったように感じる。

人々の笑顔も、通り過ぎる風も、何もかもが薄くて、心に響かない。

ただ、何かを探しているような、空虚な感覚だけが彼を包み込んでいた。

歩道を歩きながら、悠は足元を見つめた。

誰もが通り過ぎていく中、彼だけがその場に立ち尽くしているような気がした。

空を見上げると、沈みかけた太陽がその最後の光を放ち、空の底に沈みそうな色を残していた。

悠はその色に引き寄せられるように、ただただ無言で見つめていた。

そのとき、微かな音が耳に届いた。

それは、何か優しい旋律が混じった歌声だった。

悠の心は、その歌声に引き寄せられるように一瞬で静まった。

誰もいないはずの街角から聞こえてきたその声は、どこか遠くから、そしてとても近くから響いているように感じられた。

その歌声は、まるで悠の心の中に眠っていたものを優しく揺さぶるように、ひとしきり胸を締め付けてきた。

それは、涙を誘うような切なさを含み、同時にどこか温かい希望の光を灯すようだった。

しかし、希望が胸に広がる一方で、悠の心の中にはまだ大きな不安が渦巻いていた。

「これで、何かが変わるのだろうか…?」

その問いは、彼の中でどこか消えないものとなり、胸の中で膨らんでいった。

歌声は続いていたが、それに答えることはできない。

悠はその場で足を止め、心の中で自分に問いかけながらも、答えが見つからないまま、

ただその微かな希望を信じてみようと静かに決めた。