ある日、突然「白瀬霧」は姿を消した。

その消失は、まるで夢が溶けて消えるように、澪の世界から彼の存在が音もなく消えた。

不安と寂しさが澪を押し潰そうとする。

心の中で、霧がいなくなった空白を埋めることができず、澪はただその空虚さに耐えていた。

その夜、澪はふと立ち止まり、夜空を見上げた。

無数の星々が静かに輝き、澪はその光のひとつひとつが、まるで霧の言葉のように心に響くのを感じた。

「ひとつ、ひとつの星が、生きた証だよ。」

霧がいつも言っていたその言葉が、星と共に澪の中で鮮明に蘇る。

どれだけの星が、どれだけの人々が、それぞれの生きた証を刻みながら、今も遠くで輝いているのか。

「白瀬霧」の歌が、今も澪の耳に響き、口ずさむその声は、涙をこぼしながらもどこか温かく感じた。

「それでも、生きてみたい。」

その瞬間、初めて心の中からそんな言葉が湧き上がった。

霧が残した歌、言葉、温もり、すべてが今の澪を支えているように感じた。

たとえ霧がいなくても、澪はひとりじゃない。

星の下で、どこかで彼の歌が響いているような気がして、少しだけ、心が軽くなった。

澪は静かに目を閉じ、その温もりを胸に抱きながら、今度は自分の足で歩き出す決意を固めた。