季節が巡り、冷たい風が頬をかすめる頃。

それでも、空羽の心はあの頃とは違っていた。

夜になると、押し寄せていた孤独や不安。

だけど今は、そばにある温もりが、それをそっと和らげてくれる。

「寒くない?」

隣を歩く朔夜が、ふと空羽の手を握る。

「ううん、大丈夫」

そう答えながら、指を絡める。

ぎゅっと繋いだ手の温もりが、心の奥まで染み込むようだった。

——夜は、もう怖くない。

「ねえ、これから先もずっと、こうしていられるのかな?」

ふと漏れた不安げな言葉に、朔夜は優しく微笑む。

「うん。いられるよ。俺がいる」

その言葉に、空羽はそっと目を伏せる。

未来がどうなるかは分からない。

でも、この人がそばにいてくれるなら——

「…ありがとう」

小さく呟いた瞬間、空羽の視界に広がったのは、澄んだ夜空。

瞬く星が、まるで祝福するように輝いていた。

隣には、変わらない優しさで微笑む朔夜。

ふと、涙が零れ落ちる。

だけど、それはもう悲しみの涙ではなかった。

「…行こう」

差し出された手を、迷いなく握る。

二人の影が夜道に寄り添いながら伸びていく。

涙が落ちたその場所に、ふわりと光が差し込んだような気がした。

——夜を越えて、未来へ。

(完)