季節が少しずつ移ろい、空羽と朔夜の距離はますます縮まっていた。

放課後、二人で歩く帰り道。休日に交わす何気ないメッセージ。

朔夜の何気ない言葉や、優しく伸ばされる手の温もりが、空羽にとってかけがえのないものになっていた。

けれど、その温かさが増すほどに、空羽の胸の奥には小さな不安が生まれていた。

——この幸せが、いつか壊れてしまうかもしれない。

それが怖かった。

しかし、その日が訪れたのは、思いがけない瞬間だった。

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夕焼けに染まる校舎の裏庭。

風がそっと吹き抜ける中、朔夜が静かに口を開いた。

「俺、君が好きだ」

その言葉は、まっすぐに空羽の心に届いた。

「…え?」

鼓動が跳ね上がる。

朔夜は、空羽の目をじっと見つめながら続けた。

「最初は、不思議だったんだ。ただ、君が気になって、放っておけなくて。
 でも、一緒にいるうちに気づいた。俺は君に恋をしてたんだ」

空羽は息をのんだ。

彼の言葉は、優しく、だけど力強かった。

「だから、これからも君のそばにいたい。君が寂しい夜も、不安な日も、ずっと一緒にいたい」

「…私…」

何かを言おうとするが、言葉が喉につかえてしまう。

——怖い。

ずっと、ずっと、好きになったものを失うのが怖かった。

でも、朔夜の目を見た瞬間、その恐れがすっと溶けていくのを感じた。

彼は、変わらずにそこにいた。

夜が怖いと言ったときも、泣きそうになったときも、いつもそばにいてくれた。

だから——

「…私も」

震える声で、ゆっくりと紡ぐ。

「私も、あなたが好き」

涙が頬を伝う。

すると、朔夜はそっと空羽の手を握った。

「ありがとう」

夕日が二人を包み込む。

不安も、寂しさも、まだ完全に消えたわけじゃない。

だけど、今はただ、この温もりを信じていたかった。

「これからも、ずっと一緒にいてくれる?」

空羽の問いに、朔夜は迷いなく頷いた。

「もちろん。君が望む限り、俺は君のそばにいるよ」

そう言って、彼は空羽の手をぎゅっと握る。

その温もりが、夜の寂しさをそっと溶かしていった。