時計の針が午前2時を指していた。

薄暗い部屋の中で、空羽は天井を見つめたまま、眠れずにいた。

いつものことだった。
夜になると、胸の奥に広がる不安が膨れ上がり、気づけば涙が溢れそうになっている。

昼間は平気なのに、夜だけはどうしても怖い。

静寂が空羽を包み込むほど、孤独が心を締め付けていった。

そんな時、スマホの画面がふと光る。

朔夜からのメッセージだった。

「寝れないの?」

たったそれだけの言葉だったのに、なぜか心が揺さぶられる。

こんな夜更けに、どうして彼は自分のことを気にかけてくれたんだろう。

指先が震えながらも、空羽はゆっくりと返信を打つ。

「うん」

ほんの数秒後、またスマホが震えた。

「電話してもいい?」

一瞬、迷った。だけど、今は誰かの声が聞きたかった。

空羽はそっと「うん」とだけ送信した。

すぐにスマホが鳴る。

通話ボタンを押すと、穏やかな声が耳に届いた。

「…まだ起きてると思った」

「なんで…?」

「なんとなく、そんな気がしたんだ」

朔夜の声はいつもと変わらず優しくて、空羽の不安を少しずつ溶かしていくようだった。

しばらく沈黙が続いたあと、空羽はぽつりと呟いた。

「私、怖いんだ。夜が、寂しくて、孤独で…」

本当はずっと誰にも言えなかったことだった。

でも、今なら言える気がした。

電話越しに、朔夜がゆっくりと息を吸う音が聞こえた。

「大丈夫。俺がいるから」

その言葉に、空羽の胸がじんわりと温かくなる。

「夜が怖くても、寂しくても、俺がちゃんとそばにいる。だから、怖くないよ」

ふっと、肩の力が抜ける。

「…本当に?」

「うん。だからさ、明日は一緒に学校行こう?」

朔夜の言葉は、不思議と空羽の心を落ち着けた。

「…うん。」

たったそれだけの会話だったけど、電話を切った後、空羽は初めて夜が少しだけあたたかく感じた。