### **2章：出会いとその温もり**

#### **運命の出会い**

空羽が公園に足を踏み入れると、月明かりの下で静かにギターの音色が響いていた。

その音は柔らかく、時折風に乗って空羽の耳に届く。

足音を忍ばせながら進んでいくと、ギターを弾いているのは同じ学校のクラスメート、「朔夜（さくや）」だった。

彼はひとりでベンチに腰掛け、夢中でギターを弾きながら歌っていた。

空羽は立ち止まり、少しの間その歌声に聞き入っていた。

その歌声は、どこか心に響くものがあり、胸の中に静かな波を起こす。

普段はあまり気にしない人物だが、今の自分にはその歌声が心地よく感じられ、何故か胸が少しだけ温かくなる。

しかし、空羽はその場から離れようと思った。

自分がここにいる理由は歌を聴くためではない、こんなところにいても意味がないと思ってしまう。

しかし、朔夜が突然ギターを弾く手を止め、ふと空羽の方を見た。

「…歌ってるだけだよ。」

朔夜は軽く笑ってそう言った。

空羽は驚いて目を合わせたが、その顔に浮かぶ無邪気な笑顔に心が和むのを感じた。

彼の目はどこか遠くを見ているようで、その視線の先に何かを探しているようだったが、

それでも空羽に対しては温かさをもって接しているように感じた。

「あなた、もしかして…花澄空羽？」

朔夜は空羽の名前を、ただ自然に呼んだ。

空羽は少し驚いたが、うなずきながら「うん、そうだけど」と答えた。

「こんな夜に、何してるんだろうって思って。まさか君も、夜の公園でこんな時間に…」

朔夜は冗談のように笑ったが、その笑顔に心の中の緊張がほぐれていくのを感じた。

空羽はその笑顔に、なぜか安心感を覚えた。

普段ならこうした時間に誰かに話しかけられることは避けてきたが、朔夜といると自然に心が開ける気がする。

「歌ってるの、嫌じゃなければ聴いてみてよ。」
「…うん。」

空羽は思わず頷き、朔夜がギターを弾き続けるのを黙って聴いていた。

歌は何度も同じメロディを繰り返していたが、それが空羽には心地よく、心の奥に温かさが広がるような気がした。

しばらくして、朔夜が弾いていたギターをおもむろに止めて、空羽に向かって言った。

「君、こんなに遅くまで起きてるの、どうして？」

空羽は少し躊躇ったが、朔夜の優しい目を見て、なんとなく心の中の一部を口にしてしまった。

「夜は…怖いんだ。」
「怖い？」
「うん。寂しいって感じるから…」
「なるほど、そうだね。でも、ここに来てくれたのは、何か感じたからだよね。」
「…うん。」
「その気持ち、わかるよ。」

朔夜はしばらく黙っていたが、次に言った言葉が空羽の心に静かな波を立てた。

「君が怖いと思う夜が、ちょっとでも温かくなるように、僕が歌ってるんだ。」

その言葉に、空羽は目を見開き、何かが心の中で溶けるのを感じた。

朔夜の歌声、そしてその温かい言葉が、今まで抱えてきた孤独や不安を少しずつ軽くしてくれるようだった。

「ありがとう…」
空羽は小さく呟いた。

その言葉は、朔夜に向けたものだった。