歩き出すために

世界のどこにも、自分の居場所なんてない。
澪架はそう確信していた。

空は灰色にくすみ、街は静寂に包まれている。時間が止まったかのように、風すらも息をひそめていた。ここは荒廃した世界の片隅。人の気配はほとんどなく、まるでこの場所自体が現実ではないかのようだった。

彼女はただ歩いていた。どこへ向かうでもなく、ただ足を前へと運ぶ。

「私って、本当に生きてるのかな……?」

呟いた言葉は、冷たい空気に溶けて消える。
誰も答えなんてくれない。

澪架は、自分のことを「天使の落ちこぼれ」だと思っていた。
それが本当に天使だったのか、それともただの幻想だったのかは、もうどうでもよかった。
どこにも居場所がなく、何者にもなれないなら、結局同じことだ。

「生きる理由って、どこにあるんだろう?」

それを探して、どれくらいの時間が経っただろう。
答えはまだ見つからない。

けれど——

そのとき、ふと、遠くから誰かの声が聞こえた気がした。
それは、彼女の空っぽな心に、ほんの小さな波紋を広げた。

(……誰?)

澪架の足が、初めて目的を持ったかのように、そちらへと向かう。
この出会いが、彼女の世界を変えるとも知らずに——。