「ねぇ、今日はオレの彼女ね」

浅葱が悪戯っぽく言うのを、ひなせは小さく首を傾げる。

「カノジョ?」

「こないだは、訊かれたら『姉です』って答えてたじゃん?彼女でいーよ、メンドウだから」

・・・ダメだよ。お嬢はオレのだから。

風もないのに花吹雪が舞った。ひなせにはそう聞こえた。

「遊佐がヤキモチ妬くからだめ」

「えーなんだよ、それー」

ひなせが可笑しそうに笑み崩すと、はらはらと上から花びらが絶え間なく零れて落ちた。

お嬢。

お嬢。

お嬢。

鈴の音のように降る。

「・・・待っててね」

幹にそっと口付けて、ひなせは小さく微笑む。

お嬢。

お嬢。

なおも降る。




お嬢はどこにも行かせないよ。
ずぅっとオレと一緒だよ。