『・・・遊佐はお前ん中だ』

『アイツにもらったモンはどれも、お前の何かになるんだよ』

『姿形なんざ無くたってお前と一緒に生きてるってことじゃねーのか』

混濁した意識の中、支癸の低く透る声が真っ直ぐにひなせを貫いていった。いつだったか遊佐も同じように言ったのを思い出せた。

・・・オレはぜんぶ、お嬢に生まれ変わってんのかねぇ?

遊佐の一滴残らず、この躰の中で今も息づいて。
支癸も。
無月も。
由伊も。
自分に融け合って。 
いつか。
新たな命を育めたなら。
繋いでいけたら、きっと。
 
ひなせの目尻から涙がこぼれ落ちた。支癸が口を離すと嗚咽が漏れた。か細い声を上げて赤ん坊のように泣くひなせを胸に抱いたまま、支癸は桜を仰ぐ。

「・・・知るかよ。子守りは苦手なんだよ、テメーがやれ」

誰ともなく答えて切なそうに笑った。