石庭の中央で距離を置き、遊佐と氷凪は静かに対峙していた。
氷凪の右手には、不変の愛刀『月清』。遊佐が手にしていたのは、無月の愛刀『也叉』。この二振りだけが四人と共に時を渡り、時を繋いできたのだった。
「悪いねぇ貧乏クジ引かせて」
口許に薄い笑みを乗せ、遊佐は氷凪を前に平静だった。
「・・・俺が報いてやれるとしたらこれぐらいだ。侘びも礼も必要ねぇ」
「相変わらず惚れ惚れする主っぷりだな、今も昔も。ここまで付いて来られてホント冥利に尽きるよ」
「お前達在っての俺だ。・・・今も、昔も」
「褒め言葉として受け取っとく」
柘榴色の双眼がふと和らいだ。二人の間に静穏な空気が漂う。
死期を打ち明けた晩、最期は氷凪と剣を交えたいと望んだ遊佐。
『全開で行くからさ、手ェ抜くと若ダンナが死ぬよ』
眼の奥に冷ややかな闘気を揺らめかせながら、シニカルに嗤った。
『命賭けて本気でやりな?』
その意図を汲み取ったからこそ、氷凪はこうして刀を取ったのだ。手加減をするつもりは毛頭ない。支癸は『アイツの好きにさせろよ・・・』とだけ言い、無月は黙って自分の愛刀を差し出した。
「これからも千鳳院の名に賭けて、誰に恥じることない俺で在り続ける。石動の、・・・お前の主として」
いつか遥かなる天上で再会を果たすその日まで。氷凪は毅然と遊佐を見据え、誓いを口にした。
「・・・そうかい」
その言葉を深く胸にしまい込むかの様に一瞬、瞑目した遊佐が再び氷凪を見返し、おもむろに也叉を鞘から抜き放つ。切っ先を真っ直ぐに向けて不敵な笑みを滲ませた。
「じゃあ始めよっか、若ダンナ」
氷凪の右手には、不変の愛刀『月清』。遊佐が手にしていたのは、無月の愛刀『也叉』。この二振りだけが四人と共に時を渡り、時を繋いできたのだった。
「悪いねぇ貧乏クジ引かせて」
口許に薄い笑みを乗せ、遊佐は氷凪を前に平静だった。
「・・・俺が報いてやれるとしたらこれぐらいだ。侘びも礼も必要ねぇ」
「相変わらず惚れ惚れする主っぷりだな、今も昔も。ここまで付いて来られてホント冥利に尽きるよ」
「お前達在っての俺だ。・・・今も、昔も」
「褒め言葉として受け取っとく」
柘榴色の双眼がふと和らいだ。二人の間に静穏な空気が漂う。
死期を打ち明けた晩、最期は氷凪と剣を交えたいと望んだ遊佐。
『全開で行くからさ、手ェ抜くと若ダンナが死ぬよ』
眼の奥に冷ややかな闘気を揺らめかせながら、シニカルに嗤った。
『命賭けて本気でやりな?』
その意図を汲み取ったからこそ、氷凪はこうして刀を取ったのだ。手加減をするつもりは毛頭ない。支癸は『アイツの好きにさせろよ・・・』とだけ言い、無月は黙って自分の愛刀を差し出した。
「これからも千鳳院の名に賭けて、誰に恥じることない俺で在り続ける。石動の、・・・お前の主として」
いつか遥かなる天上で再会を果たすその日まで。氷凪は毅然と遊佐を見据え、誓いを口にした。
「・・・そうかい」
その言葉を深く胸にしまい込むかの様に一瞬、瞑目した遊佐が再び氷凪を見返し、おもむろに也叉を鞘から抜き放つ。切っ先を真っ直ぐに向けて不敵な笑みを滲ませた。
「じゃあ始めよっか、若ダンナ」

