霞星(かせい)ってすごい魔法使いが居てねぇ、これも全部そいつの仕業だから」

褒めているのか貶しているのか、涼しい顔で言う。 

締めくくりは“夜見の遊佐”でありたかった。でなければ先に逝かせた連中に隊長面ができない。氷凪も承知してくれたことだった。

遥か昔、戦って死ぬ以外の生き様を知らなかった。そうして命を散らした仲閒達は誇りであり、己もまたそうで在りたいと願う。

守る為に命を尽くす。しかしもう抗うべき敵もない、死に場所がない。その為に遊佐が選んだ舞台が今日この花見会だ。装束も、姿を変えた離れも、霞星が計らってくれた。

『手向けじゃ』

その一言が彼女の心そのままだった様にも思う。五百年前にはすでに千年を生きていた巫女姿の少女は、軽く袖を振っただけで舞台と全員の身なりを整えた。

『・・・そなた等のせいで少しは気も紛れた。礼を言っておこうかの』

去り際、霞星は素っ気なく背を向けた。柱に寄りかかり、腕組みしたまま薄く笑んだ遊佐。

『おかげ、の間違いだろ?オレも一応言っとくけど感謝してるよ。そりゃもう色んな意味で』

『したがいずれ逢おうぞ。・・・黄泉でな』

『気長に待ってる』

霞星に手向けを送ってくれる誰かはいるのだろうか。ふと感傷が沸いたのを、遊佐は微かに目を細めた。

「お嬢もいつか逢えるよ、きっと」