「あと少しは保つかねぇ」
樹齢70年近くは在るかという庭の一本桜。おおらかで見事な枝振りに零れんばかりの花を開かせていた。
ピクニックシートを広げ、ひなせの膝枕で寝転がった遊佐が上を見上げてしみじみ言う。澄んだ蒼穹と薄紅のコントラスト。爽やかな風も時折すり抜けてゆくが、散らす程では無い。
「週末は天気悪いらしいし、今年の花見会は明日の晩にしよっか」
「うん」
「今夜はお嬢を独り占めしていい?」
「・・・うん」
明日もその次も遊佐が望むなら。ひなせはやんわり微笑む。誰にも明かしていない思いを胸に秘め。
気持ちの良い午後だった。悪くない、と遊佐は目を閉じた。良く保ったほうだと自分を褒めてやりたい。最期の幕引きまであと少し。ひなせをこの腕から手離すその時が来たら戻るのだ。在るべき自分へと、誇りをもって。
樹齢70年近くは在るかという庭の一本桜。おおらかで見事な枝振りに零れんばかりの花を開かせていた。
ピクニックシートを広げ、ひなせの膝枕で寝転がった遊佐が上を見上げてしみじみ言う。澄んだ蒼穹と薄紅のコントラスト。爽やかな風も時折すり抜けてゆくが、散らす程では無い。
「週末は天気悪いらしいし、今年の花見会は明日の晩にしよっか」
「うん」
「今夜はお嬢を独り占めしていい?」
「・・・うん」
明日もその次も遊佐が望むなら。ひなせはやんわり微笑む。誰にも明かしていない思いを胸に秘め。
気持ちの良い午後だった。悪くない、と遊佐は目を閉じた。良く保ったほうだと自分を褒めてやりたい。最期の幕引きまであと少し。ひなせをこの腕から手離すその時が来たら戻るのだ。在るべき自分へと、誇りをもって。

