無月の精は氷凪と血が近いせいか、遊佐や支癸に比べると純度が濃厚だ。躰への負荷も大きいが、弱った遊佐には効果が高いかも知れない。ひなせなりに考え抜いた答えだった。

「あたしに出来ることなら何だってする、遊佐が死ぬなんてイヤ、絶対にイヤ・・・っ」

欠けがえのない家族、拠りどころ。誰を失っても耐えられない。遊佐を失ったら耐えられない、だから。

「あたしを無月のでいっぱいにして・・・?そしたら遊佐にあげられるでしょう」

ひなせは精一杯微笑んで見せた。

「私も同じ気持ちだよ。遊佐を活かせるのなら惜しむものなど何もない。だがそれでひなせが斃れたら、遊佐は躊躇なく命を絶つ。そんな顚末は誰も望まない。・・・解るだろう?」

遊佐は死ぬ。天命なのだ。ひなせの想いも献身も叶わないだろう。心置きなく逝かせてやる為に自分が成すべき役目を、無月は心得ていた。

「そんな風に思い詰められるより、少しでも傍で・・・お前の幸せな顔を見ていたいさ」

その言葉にひなせが大きく眸を歪めた。無月は慰めるように抱き締めて、額に頬にキスを落とす。

ふと行く末を思う。この箱庭でいつまで護りきれるだろう。らしくもなく、遊佐を失う心細さに胸を抉られる・・・・・・。