「あたしの為に無理してるの・・・?」

ひなせが俯き加減に目を逸らし、呟いた。無理じゃない、心配いらない、そう言って笑ってくれる筈だと心の隅で期待をしていた。

「してないよ」

ああほら、やっぱり。ひなせは安堵して顔を上げた。柘榴色の眼差しはいつもと変わらない。ように見えた。

「もうじき死ぬのは変わらないけどね」

「・・・・・・え?」

混乱している内に遊佐の顔が近付いて来て、キスをされているのだとひなせはやっと気付いた。

自分の口の中を遊佐の舌が自由に泳いでいるかの様な。柔らかくて滑らかなキス。随分と長いことそうされていた気もする。唇が離れると、今度は躰をしんなりと抱き竦められた。

「イキモノには寿命があるってだけ。当然だろ」

子供を宥めすかすような口調。

「お嬢が泣き喚いたって何も変わらねーから、諦めてオレの言うこと聴きな」

ひなせは取り乱すタイミングを失っていた。放心したまま、ただ積み重なっていく。言葉がひとつひとつ。

「お嬢が本気でオレを惜しんでくれんなら、何ひとつ無駄にするなよ。残りの命を喰らい尽くされてもオレは嬉しいって、そーいうのが判るぐらいのイイ女だったら・・・育て甲斐もあったかねぇ」

遊佐は笑った。ただ愛おしそうに。