君と過ごす最後の夏

翌朝、美華はいつもより早く目を覚ました。

布団の中でぼんやりと天井を見つめながら、今日の予定を思い出す。
**――海鈴との、初デート。**

「うわ……なんか緊張してきた……!」

布団の中でじたばたともがきながら、頬を両手で軽く叩く。
こんなにドキドキするのは、試合前のアップの時以来かもしれない。

とりあえず、準備しよう。

***

「……何着ていけばいいんだろ」

クローゼットの扉を開けて、制服ではない私服たちを眺める。
普段は部活ばかりで、外におしゃれして出かけることなんてほとんどない。

「やっぱり動きやすい方がいいよね……? でも、可愛い方がいいのかな……?」

隣のベッドでは、親友の詩音がスマホをいじりながら呆れ顔で見ている。

「そんなに悩むなら、最初から私に相談すればいいのに」

「いやでも、デートってなるとさ……なんか恥ずかしくて」

「……はいはい。じゃあ、手伝ってあげる」

詩音はすっと立ち上がり、美華のクローゼットの中を見渡した。
しばらく悩んだ後、「これなんてどう?」と差し出したのは、白のブラウスとデニムのスカート。

「シンプルだけど、爽やかで可愛いと思うよ。美華らしくていいんじゃない?」

「……あ、確かに!」

気負いすぎず、でもちゃんと可愛く見える組み合わせ。
詩音のセンス、さすがだな……!

「じゃあ、これにする!」

そう言って服を抱きしめると、詩音は小さく笑った。

「……楽しんできなよ」

「……うん!」

期待と緊張を胸に、美華は初めてのデートに向けて準備を始めた。