君と過ごす最後の夏

「……ねえ、詩音」

昼休み、屋上のベンチに腰掛けながら、美華は小さく息を吐いた。
横では詩音がゆっくりお弁当をつまみながら、美華の話を聞いている。

「どうしたの?」

「私……最近、海鈴のことばっかり考えちゃうんだよね」

ぽつりとこぼした言葉に、詩音は少し驚いたように目を瞬かせた。

「……そっか」

「うん。最初は『この人、なんか不思議な雰囲気の人だな~』くらいだったのに……今は、ちょっとでも視界に入ると気になっちゃって……なんか変なんだよね」

そう言いながら、美華は手元のおにぎりをぼんやりと見つめる。

「変じゃないよ」

「え?」

「それって……好きってことなんじゃない?」

詩音は静かに、けれど確信を持ったようにそう言った。

「……好き、かぁ」

美華はその言葉を噛みしめるように繰り返した。
確かに、そうなのかもしれない。
海鈴の言葉や仕草がいちいち胸に響くし、ちょっとでも他の女子と話しているのを見ると、なんだかモヤモヤしてしまう。

「……もしそうだったら、私、どうすればいいのかな」

美華の問いかけに、詩音は少し考えるように視線を落とした。

「美華がどうしたいか、じゃない?」

「……どうしたい、かぁ」

「うん。海鈴くんが美華のことを好きなのは、もう分かってるんだし……あとは美華が、自分の気持ちをどうしたいかを決めればいいんじゃない?」

「……そうだね」

詩音の言葉は静かで、でもどこか優しくて。
美華はそっと目を閉じた。

――私は、どうしたいんだろう。

海鈴の隣にいると、なんだか安心する。
でも、同時に心が騒がしくなる。

この気持ちの正体を、もっと確かめたい――。

「詩音、ありがとう。ちょっと考えてみる!」

美華はぱっと顔を上げると、笑顔を取り戻した。
それを見て、詩音も優しく微笑んだ。

(……きっと、美華はもう答えに気づいてるんだろうな)

そんなことを思いながら。

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美華が詩音に相談しながら、自分の気持ちを少しずつ整理していくシーンを書いてみたよ!
どうかな?