君と過ごす最後の夏

帰り道、美華はずっと海鈴の横顔をちらちらと盗み見ていた。

好き。
――それに気づいた瞬間、彼の一挙一動が気になって仕方がない。

「美華?」

「っ!」

名前を呼ばれ、心臓が跳ねる。
変な顔をしていなかっただろうか。バレていないだろうか。

「……な、なに?」

「なんか今日、やけに静かだなって」

「そ、そんなことないし!」

「そう?」

海鈴はふっと微笑むと、前を向いた。
その横顔があまりにも綺麗で、美華はまた視線をそらしてしまう。

(私、どうしたらいいんだろ……)

まだ、返事はしていない。
だけど、気づいてしまった以上、この気持ちを誤魔化すのは難しそうだった。

「なあ、美華」

「ん?」

「次の休み、またどっか行かねえ?」

唐突な誘いに、美華は一瞬目を瞬かせる。

「……いいの?」

「いいに決まってるだろ。むしろ、断られたら悲しい」

「……そんな言い方、ずるい」

美華はぷいっと横を向いたが、頬が熱いのは隠しきれない。

(好きだって自覚した途端、すごく意識しちゃう……)

「じゃあ、決まりだな」

そう言って、海鈴が楽しそうに笑う。

その笑顔があまりにも反則で、美華はますます胸を締めつけられるのだった。