君と過ごす最後の夏

夕陽が沈み、夜の帳が落ちる頃、美華は自室のベッドに寝転んでいた。

天井を見つめながら、ぼんやりと今日の出来事を思い返す。

――「俺、お前のことが好きだ」

海鈴の言葉が、頭の中で何度も反響する。

好き。

告白。

付き合う。

どれも、今まで縁のなかった言葉。

美華は、枕に顔を埋めた。

「……うわぁ、どうしよう……」

心臓がドキドキする。

嬉しいのか、戸惑っているのか、それすらよく分からない。

ただ、ひとつだけ確かなのは――

海鈴のことを「何とも思っていない」わけじゃないということ。

それに気づいた瞬間、ますます胸が苦しくなる。

(私、海鈴のこと……どう思ってるんだろ)

好きなのかどうか、分からない。

でも、彼が誰かと仲良くしていると、少しモヤモヤする。
彼と話していると、楽しい。
彼の言葉や行動に、いちいち心が揺れる。

(これって……好き、なの?)

だけど、恋ってそんな単純なもの?

テレビや漫画みたいに、突然「この人だ!」って分かるものなの?

「……うーん……」

考えれば考えるほど、分からなくなる。

ベッドの上でゴロゴロ転がりながら、美華はスマホを手に取った。

ふと、通知欄に海鈴からのメッセージがあることに気づく。

『今日、ちゃんと伝えられてよかった。おやすみ』

たったそれだけの言葉なのに、心臓が跳ねた。

画面を見つめながら、美華は小さく息を吐く。

(……明日、海鈴の顔、ちゃんと見られるかな)

分からないことだらけのまま、美華はスマホを握りしめ、静かに目を閉じた。

夜は、そっと彼女を包み込むように、優しく流れていった――。