君と過ごす最後の夏

美華が教室へ戻ると、すぐに詩音が気づいた。

「ねえ、美華、それ何?」

「えっ……」

視線の先には、美華のスマホ。
ついさっき、海鈴からもらったばかりの星型ストラップが、可愛らしく揺れている。

「さっきまでついてなかったよね? もしかして……プレゼント?」

詩音の目が、興味津々に細められる。

(わ、詩音、鋭すぎる……!)

美華は慌ててスマホを握りしめた。

「そ、そんなの別に……」

「えー、誰にもらったの?」

「いや、だから、そんなんじゃなくて!」

「そんなんじゃないってことは、やっぱり誰かにもらったんだね?」

「うっ……!」

詩音のしつこい問い詰めに、美華はタジタジになる。

そんな様子を見ていた周囲のクラスメイトたちも、だんだん興味を持ち始めた。

「え、美華、なんかもらったの?」
「なになに? もしかして、彼氏?」
「うそー! 佐原にそんな相手いたの!?」

「ち、違うから!」

美華が必死に否定するも、もう遅かった。

クラス中の視線が、一気に彼女に集中する。

「え、じゃあ誰から? 名前言ってよ~!」
「星のストラップって、なんか意味ありげじゃない?」
「まさか、転校生とか!?」

「ちょ、ちょっと待って!!!」

美華は顔を真っ赤にしながら、必死で手を振る。

だが、その瞬間。

「転校生?」

低めの声が、教室に響いた。

美華の全身が、一瞬にして硬直する。

(ま、まさか……)

恐る恐る振り返ると、そこには――

海鈴がいた。

ドアの前で立ち止まり、クラスのざわめきを静かに見つめている。

(うそ……なんで……!?)

「転校生って……もしかして姫宮?」

「うわ、そういえば! 佐原と姫宮って、学級委員同士だよね?」

「え、それってまさか……!」

「えええ、もしかして付き合ってるの!?」

一瞬でクラスが騒然とする。

「ち、ちが……!!」

美華は慌てて手を振る。

しかし、そのとき。

「……いや」

海鈴が、静かに口を開いた。

騒いでいたクラスメイトたちが、一瞬で黙る。

「俺たち、付き合ってるわけじゃない」

海鈴はそう言い切ると、美華に視線を向けた。

(な、なんでこっち見るの!?)

美華は無言で首を振る。

「じゃあ、なんでストラップあげたの?」

クラスの誰かが、核心をつく質問を投げた。

(うわぁぁぁ! やめて!)

美華は頭を抱えたくなった。

しかし、海鈴は特に動じる様子もなく――

「お詫びだよ」

「お詫び?」

「……ちょっとしたことで、迷惑かけたから」

海鈴は淡々と答えた。

そのあまりにも落ち着いた態度に、クラスメイトたちは拍子抜けしたようだった。

「……え、それだけ?」
「えー、でも、おそろいってさ……」

誰かがボソリと呟いたが、海鈴はそれ以上は何も言わず、静かに美華を見つめていた。

「……」

美華は、なんだか気まずくなって、視線を逸らした。

(もう……海鈴のせいで、絶対誤解されたじゃん……!)

だが、それ以上クラスメイトが騒ぐことはなく、微妙な空気のまま、ホームルームの時間になった。

海鈴は、何事もなかったかのように自分の席へ戻っていく。

美華は、胸のドキドキを抑えながら、小さく息を吐いた。

(なんか、疲れた……)

スマホに目を落とすと、ストラップの小さな星が、静かに揺れていた。

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こんな感じでどうかな?
詩音のしつこさ→クラスの騒ぎ→海鈴の冷静な対応、の流れで書いてみたよ!