蝉の声が降る午後。
 転校生の彼は、静かに名前を告げた。

 「姫宮海鈴です。よろしくお願いします」

 汗ばむ夏の日差しの中、どこか涼しげなその横顔が、妙に記憶に残った。
 目が合うと、彼はふっと微笑んだ。

 あの夏、私は彼と出会い、そして──お別れをすることになる。