終わった。私の学校生活はおしまいだ。学校では陰キャのくせにゲーセンではイキり散らしているなんてバレたら卒業まで馬鹿にされ続ける。
「お願いします! 学校のみんなには言わないでください!」
私は九十度頭を下げた。これからの学校生活が懸かっている。
「おいおーい、初手でそんなに頭下げられても困るって。俺が脅してるみたいじゃん。別に言いふらしたりしないって。まあ、プライベート知られると色々めんどいもんな学校って」
軽く笑い飛ばすような調子で設楽が答える。
「本当に……?」
「いや、だからそんなに怯えんなって。とりあえずさ、ここうるさいから一旦外出ない?」
言われた通り、設楽についていく。まだ暑さの残る外に出た後、もう一度頭を下げる。
「あの……暴言吐いてごめんなさい。本当にすみませんでした。誰にも言わないでください」
「いや、あんなん暴言のうちに入らないっしょ。まあ、負けず嫌いなんだなーとは思ったけどさ。学校の時といい意味でキャラ違うなって」
嘘だ。絶対いい意味でなんて思ってないはずだ。
「負けず嫌いとかそう言うんじゃないんですけど、つい熱くなってしまいまして……本当にすみません」
「あー、いいよいいよ。まあ、でも俺に勝てなくてもそんなに悔しがる必要ないよ。たぶん始めて一年位っしょ? なら当たり前のことだし、むしろ歴の割に全然強い方だし、なんか俺が大人げなかったというかさ」
「は……?」
カチンと来た。自分でも声が三段階くらい低くなったのがわかる。馬鹿にするな。初プレイでも私が相手なら勝てて当然? 私が馬鹿って言いたいのか? 雑魚って言いたいのか? ふざけるな。
「いいね、その顔。アガる」
設楽は笑っていた。さっきよりも更に楽しそうな顔で。学校での眠そうな表情とは別人としか思えない。
「馬鹿にしてる? なめんな」
こんなことを言える立場ではない。本来お願いをする立場だ。でも、よく考えてみれば設楽は少なくとも人間性を信用されているタイプではないし、今日のことを話すような友達がいるとも思えない。仮に言いふらされてもシラを切ればいい。簡単な話じゃないか。
「もう一回勝負してよ。次は私が勝つ」
勝負だ。私のプライドを賭けて。設楽は目を見開いた後、さらに口角が上がった。改めてじっと顔を見ると確かに笑っているが、私を馬鹿にしたり見下しているようには見えなかった。本気で楽しい、嬉しい、そういう顔だった。どうしてそんな顔をしているのかはわからないけれど。
「いいけど、その前にひとつ」
一瞬間を置いて、設楽が続ける。
「騙してるみたいで申し訳ないから一応言うんだけど、俺、中一の時から週二くらいであのゲームやってる。たまたまカード発行したのが今日だったから、意図せず奇襲戦法みたいになっちゃったけど」
設楽が今日の日付が印字されているプレイ用のカードを見せて舌を出した。
「はあ? そんなの初心者詐欺じゃん! 何それ、前のカード失くして今日たまたま新規発行しましたってこと? そんな偶然ある?」
「厳密にはちょっと違うんだけど……まあそういうことでいいや」
「前のアカウントだとランクどれくらいだったの」
「うーん、一応グランドマスター……かな」
妙に歯切れが悪いことはさておき、グランドマスターはこのゲームにおける最高ランクだ。そんな強敵に勝てるわけがない。
「ということで、これを踏まえて再戦は今からにする? 今度にする?」
設楽が無邪気な声で聞いてくる。たぶん悪い人ではなさそうだし、言いふらすことはなさそうだ。少しノンデリなところはあるけれど。
「今度にする。すぐグランドマスターになって、次は私が勝つ」
「オッケー。じゃあ、勝負は今度ってことで、今からちょっと用事付き合ってよ」
意味が分からない。フェルマーの最終定理より難解だ。
「なんで?」
「さっきの勝負、俺が勝ったからだよ」
「もっと意味わかんなくなったんだけど」
「普通勝負に負けたら罰ゲームがあるものじゃね?」
「そういうのって勝負が始まる前に決めるものだと思うけど」
「正論返されるときついな」
こいつは馬鹿なのかと思った。信じられないくらい勉強ができるくせに、言動が支離滅裂だ。
「ほら、あれだよ。俺が言いふらさないって言っても信じてなかったじゃん? 瀬川さんの秘密知っちゃったかわりに、俺の秘密も教えればイーブンかなってことでレッツゴー!」
秘密というと校則違反のバイトか何かでもしているのだろうか? そういえば、前の学校で暴力事件を起こしたという噂もあった。不良とつるんでいるのだろうか。
「え、無理。怖いんだけど」
「いや、引くのやめて傷つくから! なんかすごいやばいこと想像してない? わかった! 行先言う! 市民スポーツセンター! ほら、健全っしょ?」
さっきから情報量が多すぎる。スポーツセンターなんて無気力が服を着て歩いているような設楽と対極に存在する場所だ。
「つーわけでレッツゴー!」
「行くなんて言ってないけど」
「えーでも負けを認めないのってださくね?」
「……その言葉、覚えといてよ。次勝負するときまで」
やってしまった。すぐ挑発に乗るのは私の悪いところだ。
「いいね。じゃ、次勝負するときは勝った方が負けた方の言うこと何でも聞くってことで。ということで、今日のところは俺の勝ちだよ」
「今日だけだから」
本当に自分でも意味が分からないが、スポーツセンターについていくことになった。道中で気になったことを聞いてみる。
「運動とかダルいんじゃなかったの?」
「あー、あれね。俺、普通にスポーツ全般好きだよ。たださ、転校してから試合に出られない期間みたいなのあるから部活の勧誘は断った。ちゃんと理由言ったのにしつこかったから『だるっ』て言ったのが変な風に広まってるだけ」
意外な一面が発覚した。もしかしたら設楽は私の印象とはかなり違う人なのかもしれない。
「スポーツ好きって別に恥ずかしい秘密じゃないじゃん」
「いや、隠しておかないとまた勧誘されまくってダルいだろ。バスケ部のやつら特に勧誘必死だからバレたら死ぬほどダルい」
そうこうしているうちに目的地に着いた。設楽は入り口の券売機で何かを買った後、ちょうど受付を済ませた二人組に向かって設楽が手を振った。
「竹さんちーっす。友達連れてきたー」
私と同じくらい長い髪を一つに束ねた男子と文武両道を謳う日本有数の超名門校・礼麗高校の制服を着たイケメン。礼麗高校ってここから片道二時間くらいかかるんじゃなかったっけ、とぼんやり思った。
「竹さん。中学の時からお世話になってる先輩」
「初めまして。竹村です。灯弥がお世話になってます」
設楽が紹介すると礼麗高校の人が頭を下げた。
「こっちが竜。最近入会した。俺らと同い年」
「よろしくー。え、めっちゃ可愛い子連れてきたじゃん! 灯弥やるねえ」
「うっせーばーか」
灯弥が髪の長い人を小突いた。入会が何のことかわからないが、質問する間もなく灯弥が私を紹介した。
「瀬川光美ちゃん。同じ学校の子連れてきちった」
「瀬川です。初めまして」
とりあえず挨拶をしたが、彼らがどういう集まりなのかまったくわからない。
「あ、先に着替えてきていいっすよ。案内とか俺がやっとくんで」
設楽がそう言うと二人は看板の更衣室と書かれている方面に消えていった。
「ねえ」
「あ、これレンタルシューズチケットね。あそこの受付で渡せば体育館シューズ借りられるから。今日一組も体育だったし、運動着は持ってるっしょ?」
先ほど買ったと思われる小さな券を渡される。そういえばさっきバスケがどうたらこううたらと言っていたような気がする。
「これ、バスケの集まり?」
「そうそう、学校関係なく集まってるバスケ同好会! 俺がネットで人集めてサークル作った。見ての通り、今日は人が少ない。つーわけで、一緒にやろ!」
とんだ行動力お化けだった。学校での無気力キャラは何なのだろう。しかし、そんなことよりも今は全力で断らなくてはいけない。
「無理無理! 球拾い要員とかならまだしも、やるのは無理!」
「大丈夫! 竜も初心者だし、俺が教えるし!」
「無理無理絶対無理! 帰る!」
冗談じゃない。運動は大の苦手だ。何で見知らぬ人の前で恥をかかなきゃいけないんだ。
「おっ、敵前逃亡? らしくないんじゃないの?」
「……その手に何度も乗ると思ってる? 敵前逃亡よりも女子相手に初心者狩りの方が恥ずかしいと思うけど」
設楽の言い方は腹が立つが、いくら私でも見境なく挑発に乗るわけではない。
「まあまあ、話だけでも聞いてよ。三学期の体育バスケだって聞いたんだよ。その前に練習しておくのもありなんじゃない? 俺、自分で言うのもなんだけど教えるの上手いよ。嫌になったり疲れたりしたら帰ってもいいから、試しにちょっとだけってことで!」
「え、罰ゲームって1on1で私のこと見せしめにするって意味じゃないの?」
「そんなダサいことしねーわ!」
設楽が苦笑した。
「女子更衣室は右行って角曲がったとこ! 着替え終わったらここで待ってるからコートには一緒に行こう。はぐれた時のために伝えておくと、俺らが借りてるの一番体育館のBコート。つーことで、今日人数少なくて困ってる俺らを助けると思って、お願い!」
「人数少ないって……どこかのチームと試合するの?」
「いや、しないけど。多い方がいいから。頼りにしてるよ、瀬川さん」
私は押しに弱いのかもしれない。頼まれると断れる性格が災いし、結局シューズを借りて着替えて設楽と一緒にバスケコートに行ってしまった。なんで私こんなに流されてるんだろう。ノーと言えない日本人にもほどがある。
「お願いします! 学校のみんなには言わないでください!」
私は九十度頭を下げた。これからの学校生活が懸かっている。
「おいおーい、初手でそんなに頭下げられても困るって。俺が脅してるみたいじゃん。別に言いふらしたりしないって。まあ、プライベート知られると色々めんどいもんな学校って」
軽く笑い飛ばすような調子で設楽が答える。
「本当に……?」
「いや、だからそんなに怯えんなって。とりあえずさ、ここうるさいから一旦外出ない?」
言われた通り、設楽についていく。まだ暑さの残る外に出た後、もう一度頭を下げる。
「あの……暴言吐いてごめんなさい。本当にすみませんでした。誰にも言わないでください」
「いや、あんなん暴言のうちに入らないっしょ。まあ、負けず嫌いなんだなーとは思ったけどさ。学校の時といい意味でキャラ違うなって」
嘘だ。絶対いい意味でなんて思ってないはずだ。
「負けず嫌いとかそう言うんじゃないんですけど、つい熱くなってしまいまして……本当にすみません」
「あー、いいよいいよ。まあ、でも俺に勝てなくてもそんなに悔しがる必要ないよ。たぶん始めて一年位っしょ? なら当たり前のことだし、むしろ歴の割に全然強い方だし、なんか俺が大人げなかったというかさ」
「は……?」
カチンと来た。自分でも声が三段階くらい低くなったのがわかる。馬鹿にするな。初プレイでも私が相手なら勝てて当然? 私が馬鹿って言いたいのか? 雑魚って言いたいのか? ふざけるな。
「いいね、その顔。アガる」
設楽は笑っていた。さっきよりも更に楽しそうな顔で。学校での眠そうな表情とは別人としか思えない。
「馬鹿にしてる? なめんな」
こんなことを言える立場ではない。本来お願いをする立場だ。でも、よく考えてみれば設楽は少なくとも人間性を信用されているタイプではないし、今日のことを話すような友達がいるとも思えない。仮に言いふらされてもシラを切ればいい。簡単な話じゃないか。
「もう一回勝負してよ。次は私が勝つ」
勝負だ。私のプライドを賭けて。設楽は目を見開いた後、さらに口角が上がった。改めてじっと顔を見ると確かに笑っているが、私を馬鹿にしたり見下しているようには見えなかった。本気で楽しい、嬉しい、そういう顔だった。どうしてそんな顔をしているのかはわからないけれど。
「いいけど、その前にひとつ」
一瞬間を置いて、設楽が続ける。
「騙してるみたいで申し訳ないから一応言うんだけど、俺、中一の時から週二くらいであのゲームやってる。たまたまカード発行したのが今日だったから、意図せず奇襲戦法みたいになっちゃったけど」
設楽が今日の日付が印字されているプレイ用のカードを見せて舌を出した。
「はあ? そんなの初心者詐欺じゃん! 何それ、前のカード失くして今日たまたま新規発行しましたってこと? そんな偶然ある?」
「厳密にはちょっと違うんだけど……まあそういうことでいいや」
「前のアカウントだとランクどれくらいだったの」
「うーん、一応グランドマスター……かな」
妙に歯切れが悪いことはさておき、グランドマスターはこのゲームにおける最高ランクだ。そんな強敵に勝てるわけがない。
「ということで、これを踏まえて再戦は今からにする? 今度にする?」
設楽が無邪気な声で聞いてくる。たぶん悪い人ではなさそうだし、言いふらすことはなさそうだ。少しノンデリなところはあるけれど。
「今度にする。すぐグランドマスターになって、次は私が勝つ」
「オッケー。じゃあ、勝負は今度ってことで、今からちょっと用事付き合ってよ」
意味が分からない。フェルマーの最終定理より難解だ。
「なんで?」
「さっきの勝負、俺が勝ったからだよ」
「もっと意味わかんなくなったんだけど」
「普通勝負に負けたら罰ゲームがあるものじゃね?」
「そういうのって勝負が始まる前に決めるものだと思うけど」
「正論返されるときついな」
こいつは馬鹿なのかと思った。信じられないくらい勉強ができるくせに、言動が支離滅裂だ。
「ほら、あれだよ。俺が言いふらさないって言っても信じてなかったじゃん? 瀬川さんの秘密知っちゃったかわりに、俺の秘密も教えればイーブンかなってことでレッツゴー!」
秘密というと校則違反のバイトか何かでもしているのだろうか? そういえば、前の学校で暴力事件を起こしたという噂もあった。不良とつるんでいるのだろうか。
「え、無理。怖いんだけど」
「いや、引くのやめて傷つくから! なんかすごいやばいこと想像してない? わかった! 行先言う! 市民スポーツセンター! ほら、健全っしょ?」
さっきから情報量が多すぎる。スポーツセンターなんて無気力が服を着て歩いているような設楽と対極に存在する場所だ。
「つーわけでレッツゴー!」
「行くなんて言ってないけど」
「えーでも負けを認めないのってださくね?」
「……その言葉、覚えといてよ。次勝負するときまで」
やってしまった。すぐ挑発に乗るのは私の悪いところだ。
「いいね。じゃ、次勝負するときは勝った方が負けた方の言うこと何でも聞くってことで。ということで、今日のところは俺の勝ちだよ」
「今日だけだから」
本当に自分でも意味が分からないが、スポーツセンターについていくことになった。道中で気になったことを聞いてみる。
「運動とかダルいんじゃなかったの?」
「あー、あれね。俺、普通にスポーツ全般好きだよ。たださ、転校してから試合に出られない期間みたいなのあるから部活の勧誘は断った。ちゃんと理由言ったのにしつこかったから『だるっ』て言ったのが変な風に広まってるだけ」
意外な一面が発覚した。もしかしたら設楽は私の印象とはかなり違う人なのかもしれない。
「スポーツ好きって別に恥ずかしい秘密じゃないじゃん」
「いや、隠しておかないとまた勧誘されまくってダルいだろ。バスケ部のやつら特に勧誘必死だからバレたら死ぬほどダルい」
そうこうしているうちに目的地に着いた。設楽は入り口の券売機で何かを買った後、ちょうど受付を済ませた二人組に向かって設楽が手を振った。
「竹さんちーっす。友達連れてきたー」
私と同じくらい長い髪を一つに束ねた男子と文武両道を謳う日本有数の超名門校・礼麗高校の制服を着たイケメン。礼麗高校ってここから片道二時間くらいかかるんじゃなかったっけ、とぼんやり思った。
「竹さん。中学の時からお世話になってる先輩」
「初めまして。竹村です。灯弥がお世話になってます」
設楽が紹介すると礼麗高校の人が頭を下げた。
「こっちが竜。最近入会した。俺らと同い年」
「よろしくー。え、めっちゃ可愛い子連れてきたじゃん! 灯弥やるねえ」
「うっせーばーか」
灯弥が髪の長い人を小突いた。入会が何のことかわからないが、質問する間もなく灯弥が私を紹介した。
「瀬川光美ちゃん。同じ学校の子連れてきちった」
「瀬川です。初めまして」
とりあえず挨拶をしたが、彼らがどういう集まりなのかまったくわからない。
「あ、先に着替えてきていいっすよ。案内とか俺がやっとくんで」
設楽がそう言うと二人は看板の更衣室と書かれている方面に消えていった。
「ねえ」
「あ、これレンタルシューズチケットね。あそこの受付で渡せば体育館シューズ借りられるから。今日一組も体育だったし、運動着は持ってるっしょ?」
先ほど買ったと思われる小さな券を渡される。そういえばさっきバスケがどうたらこううたらと言っていたような気がする。
「これ、バスケの集まり?」
「そうそう、学校関係なく集まってるバスケ同好会! 俺がネットで人集めてサークル作った。見ての通り、今日は人が少ない。つーわけで、一緒にやろ!」
とんだ行動力お化けだった。学校での無気力キャラは何なのだろう。しかし、そんなことよりも今は全力で断らなくてはいけない。
「無理無理! 球拾い要員とかならまだしも、やるのは無理!」
「大丈夫! 竜も初心者だし、俺が教えるし!」
「無理無理絶対無理! 帰る!」
冗談じゃない。運動は大の苦手だ。何で見知らぬ人の前で恥をかかなきゃいけないんだ。
「おっ、敵前逃亡? らしくないんじゃないの?」
「……その手に何度も乗ると思ってる? 敵前逃亡よりも女子相手に初心者狩りの方が恥ずかしいと思うけど」
設楽の言い方は腹が立つが、いくら私でも見境なく挑発に乗るわけではない。
「まあまあ、話だけでも聞いてよ。三学期の体育バスケだって聞いたんだよ。その前に練習しておくのもありなんじゃない? 俺、自分で言うのもなんだけど教えるの上手いよ。嫌になったり疲れたりしたら帰ってもいいから、試しにちょっとだけってことで!」
「え、罰ゲームって1on1で私のこと見せしめにするって意味じゃないの?」
「そんなダサいことしねーわ!」
設楽が苦笑した。
「女子更衣室は右行って角曲がったとこ! 着替え終わったらここで待ってるからコートには一緒に行こう。はぐれた時のために伝えておくと、俺らが借りてるの一番体育館のBコート。つーことで、今日人数少なくて困ってる俺らを助けると思って、お願い!」
「人数少ないって……どこかのチームと試合するの?」
「いや、しないけど。多い方がいいから。頼りにしてるよ、瀬川さん」
私は押しに弱いのかもしれない。頼まれると断れる性格が災いし、結局シューズを借りて着替えて設楽と一緒にバスケコートに行ってしまった。なんで私こんなに流されてるんだろう。ノーと言えない日本人にもほどがある。



