街はイルミネーションに包まれ、人々の笑い声が響いていた。

私は塾の帰り道、一人で駅へ向かって歩いていた。

ふと、スマホを取り出し、LINEの画面を開く。

颯真からのメッセージは、文化祭のあとからほとんど来ていなかった。

── いや、違う。私が返していなかっただけだ。

「……はぁ」

ため息をつきながら、駅前のベンチに座る。

「よお、桜井」

突然、耳慣れた声がして、驚いて顔を上げた。

「え……一ノ瀬?」

そこには、サンタ帽を斜めにかぶった颯真が立っていた。

「何してんの、こんなとこで?」

「それは……塾帰り」

「相変わらずガリ勉だな」

そう言って笑う彼は、変わらず自由で、眩しかった。

「颯真こそ、何でここに?」

「バイト終わり。クリスマスだから、ピザ屋の配達めっちゃ忙しくてさ」

「へぇ……」

彼がバイトしてるなんて、初めて知った。

「……それで、桜井。ちょっと時間ある?」

「え?」

「ちょっとだけ、俺に付き合ってくれない?」

そう言って、彼は手を差し出した。

私は、その手をじっと見つめる。

── どうしよう。

でも、気づいたら、その手を取っていた。