静かな風がそよぐ中、二人は並んでベンチに座っていた。

「今日、一日楽しかったね。」

「……うん。」

彼女は少しうつむきながら、手のひらをぎゅっと握りしめた。

「なあ……」

彼が不意に口を開く。

ゆっくりとした動作で彼女の顔を覗き込み、そっと手を伸ばした。

「え?」

彼女が顔を上げると、彼の瞳が真っ直ぐに自分を見つめていることに気がついた。

「俺……ずっと、お前のこと……」

言葉の続きを待つ間、鼓動が速くなっていく。

「好きだよ。」

一瞬、時間が止まった気がした。

そして次の瞬間——

ふわりと唇に触れる温かさ。

驚きと共に、彼女の目が大きく見開かれる。

けれど、その優しい感触にすぐに目を閉じた。

彼の唇はそっと触れるだけで、強くもなく、弱くもなく、ただお互いの想いを確かめるように静かに重なっていた。

夜の空気が二人を包み込み、心の奥深くまで温かくなるような感覚が広がっていく。

やがて唇が離れると、彼は照れくさそうに微笑んだ。

「……今の、なしって言われたらどうしようかと思ってた。」

「なしなんて言わないよ……」

彼女もそっと微笑み、彼の手をそっと握り返す。

二人の想いが通じ合った夜。

遠くの街灯がやさしく光る中、二人はずっと手を繋いだまま座っていた。

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