きみと見つけた物語

 読み終わって、わたしは静かに本を閉じた。
 読後は、何とも言えない気持ちになった。みんなの辛かった過去を改めて聞いて息苦しくもなったし、同時に前を向こうという勇気も貰えた。
 みんなも読み終わったらしく、ゆっくりと本を閉じていた。

 「みんな、こんな辛い過去を抱えていたんだな」

 「そうですね」

 「何か、不思議な気持ちになるね」

 「はい……」

 しーん、と静まり返る。
 突然、藤崎くんが拍手をした。

 「みんな、自分の気持ちを吐き出してくれてありがとう! みんなのおかげで素敵な本が作れました。きっと誰かに、僕らの思いは届いているはず」

 「そうだな」

 「そうだね」

 「藤崎くん、小説研究部に誘ってくれて、本当にありがとう」

 わたしがそう言うと、沢田くんと寧音ちゃんも「ありがとう」と続く。
 その途端、藤崎くんがうるっと涙目になり、わたしたちはびっくりした。

 「僕……っ、絶対、小説家になります! 和真先輩、一緒に頑張りましょうね」

 「……あぁ、絶対なろうな。椎橋さんと東風さんの夢ってあるの?」

 藤崎くんと沢田くんが意気投合しているなか、わたしたちの夢を聞かれた。
 わたしがどう答えようか迷っていると、寧音ちゃんは迷わず口を開いた。

 「わたしは、まだ決まってないです。でも、小説家っていいなと思いました」

 「……わたしも、決めてないよ。でも、物語を書くのは楽しいなって思った」

 「そっか。これからも部活、頑張ろうな」

 うん、とわたしは頷いた。
 藤崎くんが「じゃあ解散にしましょう!」と言って、わたしたちは帰宅の準備をする。
 スクールバッグに荷物を入れているとき、寧音ちゃんに話しかけられた。

 「寧音ちゃん、どうしたの?」

 「わたし、今日和真先輩に告白しようと思います」

 「……えっ! すごい、頑張ってね」

 寧音ちゃんは、頬を赤く染める。
 けれど、体がプルプルと震えているのが分かった。その緊張がわたしにも伝わってくる。
 わたしは、寧音ちゃんの手をぎゅっと握った。

 「大丈夫だよ。寧音ちゃんならできる」

 「……ありがとうございます。わたし、希空先輩のこと、本当に大好き」

 「わたしもだよ。その言葉はわたしにじゃなくて、好きな人に言ってあげてね」

 寧音ちゃんと沢田くんをふたりきりにするために、わたしはすぐに部室を出た。
 するとすぐに藤崎くんも沢田くんのそばから離れていた。

 「藤崎くん、そんなに急いでどうしたの?」

 「いや、先輩に伝えたいことがあるから。前に電話で言ったけど、先輩忘れてるのかなって」

 「うん、分かってるよ。だからそんなに急がなくても、わたしは帰らないよ」

 藤崎くんの懸命さがかわいらしくて、つい笑ってしまう。
 わたしたちは、一緒に帰ることになった。