二.夢ができた
医者になってほしい。
中学校に入学してから、両親にそう告げられた。
医者の父さんは、俺にも自分のようになってほしいと思ったのだろう。
俺は、そのときから熱心に勉強ばかり頑張っていた。
友達に休み時間遊ぼうと言われても。
放課後公園で待ち合わせだと言われても。
ゲームをしようと誘われても。
全部断って、勉強していた。
でも俺は、そのときから微かに「父さんと同じ医者」にはなれるわけがないと思っていた。
だって人間は、みんな違うのだから。ロボットのように、全てが同じわけがない。
だから俺は、両親が期待している「父さんと同じ医者」にはなれないことは、もう分かっていた。
高校受験は、第一志望のところが落ちた。
そのときに母さんは泣き崩れ、父さんは俺に暴言を吐いた。
俺が全部悪いから。期待を背負っていたのに、応えられなかったから。
この結果はもう、ずっと前から分かっていたことだった。
滑り止めだったこの高校に入ってから、俺は常に成績トップを保っていた。
両親は何も言わなくなったけれど、今度はクラスメイトからいじめを受けることになった。
どうして俺は、逃げても逃げても追いつかれるのだろう。
そう思いながら迎えた、二年生のある日。後輩から小説研究部に誘われた。
俺は本が好きだから、とりあえず入部してみた。
その日から、俺の世界が変わった。
こんな“誰か”に出会えたら、少しは自分を変えられるかもしれない。
そんな“誰か”に出会うことができた。ーー小説研究部の仲間に。
そんな仲間と過ごしていくうちに、夢ができた。
俺は、小説家になりたい。
小説家になって、誰かをあっとさせられるような、そんな物語を書きたい。
医者の道には進むけれど、趣味として小説家になるという夢ができた。
俺が本当は誰かに言いたかったこと。
何もなかった俺に夢を与えてくれて、ありがとう。
著者 沢田 和真
医者になってほしい。
中学校に入学してから、両親にそう告げられた。
医者の父さんは、俺にも自分のようになってほしいと思ったのだろう。
俺は、そのときから熱心に勉強ばかり頑張っていた。
友達に休み時間遊ぼうと言われても。
放課後公園で待ち合わせだと言われても。
ゲームをしようと誘われても。
全部断って、勉強していた。
でも俺は、そのときから微かに「父さんと同じ医者」にはなれるわけがないと思っていた。
だって人間は、みんな違うのだから。ロボットのように、全てが同じわけがない。
だから俺は、両親が期待している「父さんと同じ医者」にはなれないことは、もう分かっていた。
高校受験は、第一志望のところが落ちた。
そのときに母さんは泣き崩れ、父さんは俺に暴言を吐いた。
俺が全部悪いから。期待を背負っていたのに、応えられなかったから。
この結果はもう、ずっと前から分かっていたことだった。
滑り止めだったこの高校に入ってから、俺は常に成績トップを保っていた。
両親は何も言わなくなったけれど、今度はクラスメイトからいじめを受けることになった。
どうして俺は、逃げても逃げても追いつかれるのだろう。
そう思いながら迎えた、二年生のある日。後輩から小説研究部に誘われた。
俺は本が好きだから、とりあえず入部してみた。
その日から、俺の世界が変わった。
こんな“誰か”に出会えたら、少しは自分を変えられるかもしれない。
そんな“誰か”に出会うことができた。ーー小説研究部の仲間に。
そんな仲間と過ごしていくうちに、夢ができた。
俺は、小説家になりたい。
小説家になって、誰かをあっとさせられるような、そんな物語を書きたい。
医者の道には進むけれど、趣味として小説家になるという夢ができた。
俺が本当は誰かに言いたかったこと。
何もなかった俺に夢を与えてくれて、ありがとう。
著者 沢田 和真



