わたしと藤崎くんは、自由時間が終わり、そのまま部室へ向かった。
 沢田くんと寧音ちゃんはもう来ていて、何だかふたりとも以前よりも距離が近いなと思った。
 ……もしかしたら、ふたりで一緒に文化祭回ってたのかな。
 そんな考えが、頭に浮かんだ。

 「あ、希空せんぱーい!」

 「寧音ちゃん。聞きたいんだけど、もしかして沢田くんと一緒に回ってた?」

 「……え! な、何で知ってるんですかっ」

 「うーん、何となく。雰囲気?」

 沢田くんに聞こえないように、ヒソヒソと話を進める。
 耳まで真っ赤に染める寧音ちゃんを見て、愛おしく思う。

 「そういう先輩と藤崎くんも、一緒だったんですよね!?」

 「う、うん。そうだよ」

 「……お互い、付き合えるといいですね。まぁ、そちらのおふたりは成功すると思うけど」

 「わたしも寧音ちゃんたちは成功すると思うな」

 わたしたちはぷっ、と小さく噴き出した。
 すると沢田くんが「おーい」とわたしたちを呼ぶ。

 「お客さんいっぱい来たよー」

 「あ、うん! 今行く」

 部活に入っていない生徒たちや、保護者、子どもたち、高齢者という幅広い年齢の人が来てくれた。
 来てくれた人たちには小説研究部がどういう活動をしているのかを説明し、作った本を配った。
 みんな喜んでくれて、その人たちの笑顔を見ると、今まで頑張ってきた甲斐があったなと思った。


 ふと空を見上げると、あけぼの色だった。
 もうそろそろ文化祭が終わる時間帯だから、きっともう来てくれる客は少ないだろう。
 わたしたちはふぅ、と息を吐いて椅子へ腰かける。
 ずっと立ったままだったから、足腰が疲れてしまった。

 「今日はお疲れ様でした! 大盛りあがりで、本も全部無くなったし!」

 「すごいな、本当に」

 「頑張ってきて良かったぁ」

 「お疲れ様」

 わたしたちはそう言って、残った四冊の本のなかから、一冊だけ手に取る。
 ……どんな物語になっているんだろう。この四ヵ月にも満たない時間で、わたしたちが描いた物語は。
 わたしは、ページをゆっくりとめくった。