一週間が経って、おじいちゃんが退院した。そしてわたしは、ふと気づいたことがある。
 それは、以前よりも心が軽くなっていたこと。
 もしかしたら、寧音ちゃんや沢田くんに対して疑問を抱いていた思いが、風化したからかもしれない。
 欠けていたハートが、少しずつ戻っていくような、そんな感じがした。

 「おじいちゃん、おかえり」

 「ただいま、希空」

 「うん、待ってたよ。あ、お茶飲む?」

 「あぁ、ありがとう」

 おじいちゃんは元気そうに笑って、椅子に腰を掛ける。その笑顔を見て、わたしは安心する。
 おじいちゃんがいないこの一週間は、とても寂しかった。

 「希空、最近どうだ? 小説研究部は」

 「うん、すごく楽しいよ。今度文化祭があって、そこで短い本を出すの。わたしはエッセイを書いたんだよ」

 「おぉ、それはすごいな。おじいちゃんも読みたいな」

 そう言ってくれたことが、すごく嬉しいと思った。
 でもおじいちゃんは退院したばかりだし、きっと学校に来るのは難しいよね。

 「一冊貰って来ようか?」

 わたしは、そう提案した。
 おじいちゃんは、ゆっくりと首を縦に振る。

 「すまんな、ありがとう。希空は本当に優しい子に育ったね」

 「……そうかな。わたし、自分ではまだ分からないの。どう成長したのか、それともまだ、全然成長していないのか」

 自分が成長したと思ったことはあるけれど、実際どう変わったのは分からない。
 そんな不安が伝わったのか、おじいちゃんは微笑んだ。

 「大丈夫、希空は成長してるよ。前よりおじいちゃんとこうやって関わってくれるじゃないか」

 「それは、大切な人を失うのが怖かったからで……。今はそういうネガティブのことを考えないから、関われるだけで」

 自分でそう言ってから、ハッと気がつく。
 そっか。わたし、今はもっとたくさんの人と関りたいって思ってる。
 みんなで何かをやる楽しみを知ることができたから、もっと挑戦したいって思っているんだ。
 おじいちゃんは、うんうん、と言いながら頷く。

 「それでいいんだよ、希空は。自分の気持ちに正直になって、いいんだよ」

 「……うん。ありがとう、おじいちゃん。わたし、これからもっと成長できたらいいな」

 「できるさ、絶対。自慢の孫なんだから」

 ふふっ、と微笑んでしまう。
 おじいちゃんとこうやって話す時間は、とても幸せ。
 そして自分が成長したと言ってもらえるのは、今まで頑張ってきた達成感があった。