わたしはお母さんの車に乗せられ、再び病院に行った。
けれど向かったのは集中治療室ではなく、普通の病室だった。
やっぱりおじいちゃん、もう手術が終わっているんだ。
口から心臓が飛び出そうなくらいドキドキしながら、一歩ずつ進む。
「……おじい、ちゃん」
「おぉ、希空。来てくれたのか」
そこには、ベッドで横になっている、おじいちゃんがいた。
頭のなかが真っ白になる。
どういうことだろうと思っていると、お母さんが説明してくれた。
「おじいちゃんの肺にある腫瘍は、無事取り除けたの。再発する可能性はあるけど、安静にしていれば一週間で退院みたい」
「……ていうことは、おじいちゃん、元気なの?」
わたしの問いに、お母さんとお父さんは笑顔で頷いた。
涙がポロポロと湧き出てくる。おじいちゃんのそばにゆっくりと歩み寄ると、優しく頭をポンポンと撫でてくれた。
「希空、心配かけてすまんな。おじいちゃん、まだまだ元気だぞ」
「……うん、心配した。もうこのままおじいちゃんと話せなくなっちゃったらどうしよう、って。結依とおばあちゃんのときみたいになったら、わたし……っ」
それから先は、言葉にするのが怖かった。
言葉にしたら、何だか本当に現実になってしまう気がするから。
ーー結依とおばあちゃんのときみたいになったら、もう生きていけない。その気持ちを、心の扉に閉ざした。
おじいちゃんは、優しく微笑んでくれた。
「そうか。心配してくれてありがとうな、希空」
「……うん。あとね、おじいちゃん。わたし、藤崎くんと仲直りできたよ。今まで上手くいってなかった友達とも和解できた」
「おぉ、そうかそうか。よく頑張ったな、希空」
「ありがとう。おじいちゃんのおかげだよ」
本当に、おじいちゃんには感謝しかない。
わたしが行くべき正しい道を教えてくれたから。
けれどおじいちゃんは「それは違うよ」と言って、否定した。
「おじいちゃんのおかげじゃない。希空が自分で頑張ったからだよ」
「……そんな、こと。だっておじいちゃんにアドバイスされなかったら、分からなかったし」
「それは、希空自身が見つけた答えだ。おじいちゃんはちょーっとアドバイスしただけ。希空、自信を持つことも大切だよ」
自信を持つーー。
おじいちゃんは自信を持っているから、堂々と自分の意見をハッキリ言うことができるのかな。
わたしもそうなれたらいいな、と思いながら強く頷いた。
「おじいちゃん、早く退院してね。家におじいちゃんがいないと寂しい」
「はは、そうか。任せなさい、早く退院してみせるから」
おじいちゃんに甘えるなんて、初めてかもしれない。
少し照れくさくなりながらも、おじいちゃんの笑顔をもう一度見ることができて良かったなと思った。
けれど向かったのは集中治療室ではなく、普通の病室だった。
やっぱりおじいちゃん、もう手術が終わっているんだ。
口から心臓が飛び出そうなくらいドキドキしながら、一歩ずつ進む。
「……おじい、ちゃん」
「おぉ、希空。来てくれたのか」
そこには、ベッドで横になっている、おじいちゃんがいた。
頭のなかが真っ白になる。
どういうことだろうと思っていると、お母さんが説明してくれた。
「おじいちゃんの肺にある腫瘍は、無事取り除けたの。再発する可能性はあるけど、安静にしていれば一週間で退院みたい」
「……ていうことは、おじいちゃん、元気なの?」
わたしの問いに、お母さんとお父さんは笑顔で頷いた。
涙がポロポロと湧き出てくる。おじいちゃんのそばにゆっくりと歩み寄ると、優しく頭をポンポンと撫でてくれた。
「希空、心配かけてすまんな。おじいちゃん、まだまだ元気だぞ」
「……うん、心配した。もうこのままおじいちゃんと話せなくなっちゃったらどうしよう、って。結依とおばあちゃんのときみたいになったら、わたし……っ」
それから先は、言葉にするのが怖かった。
言葉にしたら、何だか本当に現実になってしまう気がするから。
ーー結依とおばあちゃんのときみたいになったら、もう生きていけない。その気持ちを、心の扉に閉ざした。
おじいちゃんは、優しく微笑んでくれた。
「そうか。心配してくれてありがとうな、希空」
「……うん。あとね、おじいちゃん。わたし、藤崎くんと仲直りできたよ。今まで上手くいってなかった友達とも和解できた」
「おぉ、そうかそうか。よく頑張ったな、希空」
「ありがとう。おじいちゃんのおかげだよ」
本当に、おじいちゃんには感謝しかない。
わたしが行くべき正しい道を教えてくれたから。
けれどおじいちゃんは「それは違うよ」と言って、否定した。
「おじいちゃんのおかげじゃない。希空が自分で頑張ったからだよ」
「……そんな、こと。だっておじいちゃんにアドバイスされなかったら、分からなかったし」
「それは、希空自身が見つけた答えだ。おじいちゃんはちょーっとアドバイスしただけ。希空、自信を持つことも大切だよ」
自信を持つーー。
おじいちゃんは自信を持っているから、堂々と自分の意見をハッキリ言うことができるのかな。
わたしもそうなれたらいいな、と思いながら強く頷いた。
「おじいちゃん、早く退院してね。家におじいちゃんがいないと寂しい」
「はは、そうか。任せなさい、早く退院してみせるから」
おじいちゃんに甘えるなんて、初めてかもしれない。
少し照れくさくなりながらも、おじいちゃんの笑顔をもう一度見ることができて良かったなと思った。



