藤崎くんが連れて行ってくれた場所は、ファミリーレストランだった。
どうしてファミレスなんだろう、と思いつつ、わたしは藤崎くんの後に続く。
入店と同時に音楽が流れ、店員さんが来た。
「いらっしゃいませ、何名様ですかー?」
「二人です」
「二名様ですねー。お席ご案内いたします」
普段、こういう外食をしたことがないから、ビクビクしながら席へ着いた。
向かい側に座る藤崎くんは、ルンルンしながらメニュー表を見ている。
「ふ、藤崎くん。どうして、ファミレス?」
「あぁ。何か、先輩の顔が今にも骨になりそうなくらい細くて、心配だったから」
「え……それでファミレス?」
「はい。何か食べれば変わるかなーって。もちろん、おじいさんのことを心配な気持ちは分かりますよ。だから、目を覚ましたとき元気な姿を見てもらいたいでしょ!」
……そっか。わたし、いつの間にか藤崎くんにも心配かけてたんだね。
わたしはメニュー表を見て、チーズハンバーグにした。
藤崎くんは、ミートソーススパゲッティが好物らしく、注文していた。
こうやってふたりでご飯を食べるなんて、初めてだ。
「お待たせしました、チーズハンバーグとミートソーススパゲッティになります」
慣れていないナイフとフォークを使い、わたしはハンバーグを口に運ぶ。
とろけるチーズとデミグラスソースが相性抜群で、とても美味しかった。
「……美味しい」
「え、もしかして、先輩ここ来るの初めてですか?」
「うん。わたしの家庭、あんまり外食とかしないの。だからこういう場所で食べる機会も少ないし」
そう言うと、藤崎くんは目を丸くした。
確かに、友達とこういうファミレスに行ったり、食べたりしている子もいる。SNSで見かけることもある。
でもわたしは、あまりそういう機会がなかった。
「でもたまには来てみたいな。友達と来たら楽しそう」
「じゃあ僕がこれから、いっぱい連れて行きますよ!」
「え……いいの? 藤崎くんも友達とかと来るんじゃ」
「来るけど、僕は先輩とも来たいって思ってるし!」
その言葉に胸を打たれた。
どうしてこの子は、こんなにも素直に気持ちを言えるのだろう。言われた側のほうが照れてしまうようなことを。
「先輩が嬉しそうで良かった。強引に連れ出してごめんなさい」
「ううん、むしろ感謝してるくらいだよ。藤崎くんが連れてきてくれなかったら、わたしはこの場所で今ハンバーグ食べてないし」
「あははっ、先輩、ハンバーグ好きなんだね」
藤崎くんはおもしろそうに笑った。
藤崎くんとここに来れたことが嬉しいと伝えたかったのだけれど、言葉選びを間違えてしまった。
でも藤崎くんの笑顔が見れただけで、わたしは嬉しい。
互いに会計を済ませ、店を出るとき。
お母さんから電話が掛かってきた。
「もしもし、お母さん?」
『希空、今どこにいるの?』
「近くのファミレスだよ」
『じゃあ迎えに行くね。おじいちゃんのところ行きましょう』
わたしは、拳をぎゅっと握りしめる。
お母さんは、無事とも、無事じゃないとも言っていなかった。
もしかして、と嫌なことが頭によぎる。
「先輩、お母さんなんて?」
「……迎えに、来るって。藤崎くんは?」
「僕もそろそろ帰ります。もう外は暗くなってくる頃だし。じゃあここで解散しましょうか」
……大丈夫かな。
わたし、藤崎くんがそばにいないと心細くなる病気になってしまったのかもしれない。
怖くて、不安なことばかり考えてしまう。
それが伝わったのか、藤崎くんはにこっと笑った。
「大丈夫。何があっても、僕がいます。沢田先輩も、椎橋さんも。だから安心して行ってきてください」
言われてからハッ、と気がつく。
そうだ。わたしは、結依とおばあちゃんを失ったときのわたしじゃない。
今のわたしには、みんながいる。ひとりじゃない。
「……うん。ありがとう、藤崎くん!」
神様、どうかお願いします。
おじいちゃんを助けてください。
わたしのそばにいてくれた、大好きなおじいちゃんに。
ありがとうと、伝えたいから。
どうしてファミレスなんだろう、と思いつつ、わたしは藤崎くんの後に続く。
入店と同時に音楽が流れ、店員さんが来た。
「いらっしゃいませ、何名様ですかー?」
「二人です」
「二名様ですねー。お席ご案内いたします」
普段、こういう外食をしたことがないから、ビクビクしながら席へ着いた。
向かい側に座る藤崎くんは、ルンルンしながらメニュー表を見ている。
「ふ、藤崎くん。どうして、ファミレス?」
「あぁ。何か、先輩の顔が今にも骨になりそうなくらい細くて、心配だったから」
「え……それでファミレス?」
「はい。何か食べれば変わるかなーって。もちろん、おじいさんのことを心配な気持ちは分かりますよ。だから、目を覚ましたとき元気な姿を見てもらいたいでしょ!」
……そっか。わたし、いつの間にか藤崎くんにも心配かけてたんだね。
わたしはメニュー表を見て、チーズハンバーグにした。
藤崎くんは、ミートソーススパゲッティが好物らしく、注文していた。
こうやってふたりでご飯を食べるなんて、初めてだ。
「お待たせしました、チーズハンバーグとミートソーススパゲッティになります」
慣れていないナイフとフォークを使い、わたしはハンバーグを口に運ぶ。
とろけるチーズとデミグラスソースが相性抜群で、とても美味しかった。
「……美味しい」
「え、もしかして、先輩ここ来るの初めてですか?」
「うん。わたしの家庭、あんまり外食とかしないの。だからこういう場所で食べる機会も少ないし」
そう言うと、藤崎くんは目を丸くした。
確かに、友達とこういうファミレスに行ったり、食べたりしている子もいる。SNSで見かけることもある。
でもわたしは、あまりそういう機会がなかった。
「でもたまには来てみたいな。友達と来たら楽しそう」
「じゃあ僕がこれから、いっぱい連れて行きますよ!」
「え……いいの? 藤崎くんも友達とかと来るんじゃ」
「来るけど、僕は先輩とも来たいって思ってるし!」
その言葉に胸を打たれた。
どうしてこの子は、こんなにも素直に気持ちを言えるのだろう。言われた側のほうが照れてしまうようなことを。
「先輩が嬉しそうで良かった。強引に連れ出してごめんなさい」
「ううん、むしろ感謝してるくらいだよ。藤崎くんが連れてきてくれなかったら、わたしはこの場所で今ハンバーグ食べてないし」
「あははっ、先輩、ハンバーグ好きなんだね」
藤崎くんはおもしろそうに笑った。
藤崎くんとここに来れたことが嬉しいと伝えたかったのだけれど、言葉選びを間違えてしまった。
でも藤崎くんの笑顔が見れただけで、わたしは嬉しい。
互いに会計を済ませ、店を出るとき。
お母さんから電話が掛かってきた。
「もしもし、お母さん?」
『希空、今どこにいるの?』
「近くのファミレスだよ」
『じゃあ迎えに行くね。おじいちゃんのところ行きましょう』
わたしは、拳をぎゅっと握りしめる。
お母さんは、無事とも、無事じゃないとも言っていなかった。
もしかして、と嫌なことが頭によぎる。
「先輩、お母さんなんて?」
「……迎えに、来るって。藤崎くんは?」
「僕もそろそろ帰ります。もう外は暗くなってくる頃だし。じゃあここで解散しましょうか」
……大丈夫かな。
わたし、藤崎くんがそばにいないと心細くなる病気になってしまったのかもしれない。
怖くて、不安なことばかり考えてしまう。
それが伝わったのか、藤崎くんはにこっと笑った。
「大丈夫。何があっても、僕がいます。沢田先輩も、椎橋さんも。だから安心して行ってきてください」
言われてからハッ、と気がつく。
そうだ。わたしは、結依とおばあちゃんを失ったときのわたしじゃない。
今のわたしには、みんながいる。ひとりじゃない。
「……うん。ありがとう、藤崎くん!」
神様、どうかお願いします。
おじいちゃんを助けてください。
わたしのそばにいてくれた、大好きなおじいちゃんに。
ありがとうと、伝えたいから。



