五月も後半になり、もうすぐ春が終わって梅雨が来てしまう。
わたしは、雨が嫌いだ。片頭痛になるし、憂鬱な気分になるし。梅雨が来るのは嫌だなぁ……と思いながら、太陽が昇る空を見上げる。
……結依とおばあちゃんは、天気が分かるのかな。空って、どんなふうになっているの?
そんなことを考えるわたしは、意外とファンタジーものが好きなのかもしれない。
「おはよー、希空」
「希空、おはよ!」
「ふたりともおはよう。美波、体調は大丈夫なの?」
「うん、昨日メッセージありがとねー。まだちょっと咳はあるんだけど、熱は下がった!」
美波が戻ってきたことで、わたしはまた仲間はずれになるのだろう。
そう思って過ごしていたけれど、以前よりも美波が話しかけてくる気がした。
気の所為かと思ったけれど、昼休憩のとき、優花よりも先に声を掛けてきた。
「希空、今日はふたりでパン買って食べない?」
「え、あの、わたしお弁当だよ」
「そうなんだ、全然いいよー!」
「それより、優花はいいの?」
美波とふたりで食べることは構わないが、どうして優花を誘わないのだろうと疑問が浮かんだ。
すると美波が、ヒソヒソと小声で打ち明けてきた。
「ちょっと希空にだけ相談したいことがあるの! 優花なら別に他の友達もいるだろうし。ね、いいでしょ?」
「う、うん、分かった」
勢いに任せて、美波とふたりで食べることになってしまった。
相談ってなんだろう。優花に話せないことなのかな。
「あのねー、優花に彼氏を取られたの!」
「彼氏……って、もしかして中野先輩っていう人?」
「そうそう。あ、優花から聞いた?」
「……うん」
これはもしかして、わたしが優花と美波の間に挟まれているパターンか。
お互い意見を持っているから、まだすれ違っているのかもしれない。
面倒事に巻き込まれたくないけど、話を聞かないという選択肢は、わたしにはない。
「あの、それ、誤解だと思う。優花から聞いた話だと、別に何もないんだって」
「いや、違うの。ウチ見ちゃったんだ。中野先輩が、優花の家に入っていくところ!」
美波がパンを食べながらそう言った。
それは確かに、優花の聞いていた話とは違う。
「だって付き合ってもいないのに女の家に入るわけないよ!」
「確かに、それはそうだけど……もしかしたら事情があったのかもしれないし」
「そうだとしても、ウチはもう優花とは仲良くできない。裏切るような奴、友達じゃないし。ねぇ、希空はどっちの味方なの?」
……味方。
わたしは、どっちの味方でもない。わたしには関係ないのに、そう質問されるのはずるい。
ここで美波の味方と言ったら、優花は仲間はずれになる。でも優花の味方と言ったら、美波が納得いかないと思う。
何を選ぶのが正解なのか、わたしには分からない。
「わたしは優花の味方でもあるし、美波の味方でもあるよ」
「なにそれ。希空ってさ、たまに何考えてるか分からないんだよね」
「……それは、自分でも認めるよ。どっちの味方って言えるほど、わたしは強くない」
そう言うと、しーん、と静まり返る。
わたしは、美波に何を言われるのかハラハラしていた。
「そう。ウチは希空に、味方だって言ってほしかったな」
わたしは何も答えられず、立ち尽くしていた。
その後、美波から『ごめんね』とメッセージが来ていた。
『わたしこそごめんなさい』と返したけれど、何が悪かったのか分からない。
わたしは、誰も傷つかない方法を選んだつもりだったけれど、結果美波を傷つけてしまった。
誰も傷つかないというのは、無理なのかもしれない。今更だけど、そう思った。
わたしは、雨が嫌いだ。片頭痛になるし、憂鬱な気分になるし。梅雨が来るのは嫌だなぁ……と思いながら、太陽が昇る空を見上げる。
……結依とおばあちゃんは、天気が分かるのかな。空って、どんなふうになっているの?
そんなことを考えるわたしは、意外とファンタジーものが好きなのかもしれない。
「おはよー、希空」
「希空、おはよ!」
「ふたりともおはよう。美波、体調は大丈夫なの?」
「うん、昨日メッセージありがとねー。まだちょっと咳はあるんだけど、熱は下がった!」
美波が戻ってきたことで、わたしはまた仲間はずれになるのだろう。
そう思って過ごしていたけれど、以前よりも美波が話しかけてくる気がした。
気の所為かと思ったけれど、昼休憩のとき、優花よりも先に声を掛けてきた。
「希空、今日はふたりでパン買って食べない?」
「え、あの、わたしお弁当だよ」
「そうなんだ、全然いいよー!」
「それより、優花はいいの?」
美波とふたりで食べることは構わないが、どうして優花を誘わないのだろうと疑問が浮かんだ。
すると美波が、ヒソヒソと小声で打ち明けてきた。
「ちょっと希空にだけ相談したいことがあるの! 優花なら別に他の友達もいるだろうし。ね、いいでしょ?」
「う、うん、分かった」
勢いに任せて、美波とふたりで食べることになってしまった。
相談ってなんだろう。優花に話せないことなのかな。
「あのねー、優花に彼氏を取られたの!」
「彼氏……って、もしかして中野先輩っていう人?」
「そうそう。あ、優花から聞いた?」
「……うん」
これはもしかして、わたしが優花と美波の間に挟まれているパターンか。
お互い意見を持っているから、まだすれ違っているのかもしれない。
面倒事に巻き込まれたくないけど、話を聞かないという選択肢は、わたしにはない。
「あの、それ、誤解だと思う。優花から聞いた話だと、別に何もないんだって」
「いや、違うの。ウチ見ちゃったんだ。中野先輩が、優花の家に入っていくところ!」
美波がパンを食べながらそう言った。
それは確かに、優花の聞いていた話とは違う。
「だって付き合ってもいないのに女の家に入るわけないよ!」
「確かに、それはそうだけど……もしかしたら事情があったのかもしれないし」
「そうだとしても、ウチはもう優花とは仲良くできない。裏切るような奴、友達じゃないし。ねぇ、希空はどっちの味方なの?」
……味方。
わたしは、どっちの味方でもない。わたしには関係ないのに、そう質問されるのはずるい。
ここで美波の味方と言ったら、優花は仲間はずれになる。でも優花の味方と言ったら、美波が納得いかないと思う。
何を選ぶのが正解なのか、わたしには分からない。
「わたしは優花の味方でもあるし、美波の味方でもあるよ」
「なにそれ。希空ってさ、たまに何考えてるか分からないんだよね」
「……それは、自分でも認めるよ。どっちの味方って言えるほど、わたしは強くない」
そう言うと、しーん、と静まり返る。
わたしは、美波に何を言われるのかハラハラしていた。
「そう。ウチは希空に、味方だって言ってほしかったな」
わたしは何も答えられず、立ち尽くしていた。
その後、美波から『ごめんね』とメッセージが来ていた。
『わたしこそごめんなさい』と返したけれど、何が悪かったのか分からない。
わたしは、誰も傷つかない方法を選んだつもりだったけれど、結果美波を傷つけてしまった。
誰も傷つかないというのは、無理なのかもしれない。今更だけど、そう思った。



