ーー……ここ、どこだろう。
ふわふわしていて、まるで雲の上を漂っているような感覚。
これは夢なんだ、と直感で分かった。
暗闇の中、遥か向こうに光が見える。わたしは、その光に向かって走り出す。
「希空、早く早く!」
「希空ちゃん、おいで」
あぁ、ずっと聞きたかった、大好きなひとたちの声。
わたしを呼んでいるふたりは、あの光の先にいるのだろうか。
「ふたりとも待ってて、すぐ行くから!」
もう少しで届きそうな光に、手を伸ばす。
けれど届かない。届きそうで届かないのが、とても悔しくて、もどかしい。
すると、ひとりの男の子が、わたしに手を差し伸べてきた。
そしてわたしは、その子の手を取ったーー。
チュンチュン、という小鳥の鳴き声で目が覚めると、涙で頬が濡れていた。
ーー……あの夢はいったい、何だったんだろう。
ずっと聞きたかった、親友と祖母の声。そして、謎の男の子。
夢に何かしらの意味があるのかもしれない。けれど、わたしはもう光を見失ってしまった。希望はもう、ないから。
一匹の小鳥が、空へ羽ばたいていく。それにもう一匹の小鳥が続く。
わたしもあの小鳥のように、空へ行くことができたら。そしたらふたりに会えるのに。
届くことのない空へ手を掲げ、絶望した朝を迎える。それがいつもの日常。
身支度を整えて一階へ行くと、料理をするお母さん、新聞を読むお父さんが目に入る。
心臓の鼓動がドクン、と跳ねる。わたしはすぐに母に尋ねた。
「お母さん」
「あら、希空、おはよう。ごめんね、もうすぐご飯できるから」
「いや、それより。おじいちゃんは?」
あの日のことを思い出してしまって、手が震える。
それはあの日からあまり時が進んでいないからなのか、それともトラウマとして残ってしまっているからなのか。
お母さんはきょとんとした顔で答える。
「おじいちゃんなら、散歩に行ってるわよ。そんな顔してどうしたのかと思ったら。びっくりさせないでよ」
「……そっか。うん、ごめん」
お母さんは笑ってそう言うけれど、わたしにとってはそんな笑い事じゃない。
というより、どうしてお母さんは今もそんな普通でいられるのか不思議だ。
“自分のお母さん”が消えてしまったのに、そんな平然といられる理由を知りたい。
「ごめん、今日食欲ないから、もう学校行くね」
「え? 大丈夫なの?」
「うん、熱はないし、大丈夫。じゃあ行ってきます」
そう言って外へ出ると、あたたかい風が吹き、桜が舞っていた。
あっという間に春が来てしまった、という感覚が胸に残る。
そんなことを考えながら、あの“息が詰まる”学校へと向かう。
……家にいるのも、学校へ行くのも、もううんざりだ。
ふわふわしていて、まるで雲の上を漂っているような感覚。
これは夢なんだ、と直感で分かった。
暗闇の中、遥か向こうに光が見える。わたしは、その光に向かって走り出す。
「希空、早く早く!」
「希空ちゃん、おいで」
あぁ、ずっと聞きたかった、大好きなひとたちの声。
わたしを呼んでいるふたりは、あの光の先にいるのだろうか。
「ふたりとも待ってて、すぐ行くから!」
もう少しで届きそうな光に、手を伸ばす。
けれど届かない。届きそうで届かないのが、とても悔しくて、もどかしい。
すると、ひとりの男の子が、わたしに手を差し伸べてきた。
そしてわたしは、その子の手を取ったーー。
チュンチュン、という小鳥の鳴き声で目が覚めると、涙で頬が濡れていた。
ーー……あの夢はいったい、何だったんだろう。
ずっと聞きたかった、親友と祖母の声。そして、謎の男の子。
夢に何かしらの意味があるのかもしれない。けれど、わたしはもう光を見失ってしまった。希望はもう、ないから。
一匹の小鳥が、空へ羽ばたいていく。それにもう一匹の小鳥が続く。
わたしもあの小鳥のように、空へ行くことができたら。そしたらふたりに会えるのに。
届くことのない空へ手を掲げ、絶望した朝を迎える。それがいつもの日常。
身支度を整えて一階へ行くと、料理をするお母さん、新聞を読むお父さんが目に入る。
心臓の鼓動がドクン、と跳ねる。わたしはすぐに母に尋ねた。
「お母さん」
「あら、希空、おはよう。ごめんね、もうすぐご飯できるから」
「いや、それより。おじいちゃんは?」
あの日のことを思い出してしまって、手が震える。
それはあの日からあまり時が進んでいないからなのか、それともトラウマとして残ってしまっているからなのか。
お母さんはきょとんとした顔で答える。
「おじいちゃんなら、散歩に行ってるわよ。そんな顔してどうしたのかと思ったら。びっくりさせないでよ」
「……そっか。うん、ごめん」
お母さんは笑ってそう言うけれど、わたしにとってはそんな笑い事じゃない。
というより、どうしてお母さんは今もそんな普通でいられるのか不思議だ。
“自分のお母さん”が消えてしまったのに、そんな平然といられる理由を知りたい。
「ごめん、今日食欲ないから、もう学校行くね」
「え? 大丈夫なの?」
「うん、熱はないし、大丈夫。じゃあ行ってきます」
そう言って外へ出ると、あたたかい風が吹き、桜が舞っていた。
あっという間に春が来てしまった、という感覚が胸に残る。
そんなことを考えながら、あの“息が詰まる”学校へと向かう。
……家にいるのも、学校へ行くのも、もううんざりだ。



