「なんで……」

 翌日。
 追記が、あった。
 教室の扉も、もう当たり前のように開いていたから、違和感を覚えることもなく開けてしまっていた。

『ご想像にお任せ致します』

 字は、最初の文章と同じ綺麗さだった。
 それにしても、想像に任せる、とは。

「一体、誰が……」

 その答えを得る為の材料は、あまりに少ない。
 人であろうが人ではなかろうが、それを確認することは出来ない。
 ただ誰かが、これを読んでいることは分かった。
 誰かが、返信を書くということも分かってしまった。
 なら、それを知る為には、この誰とも知れない相手との交換日記を、続ければいい。

(別に、続ける意味もないはずなんだけどな……)

 心の中ではそう思いながらも、俺はまた、ペンを取り出していた。
 何となく。そう、ただ何となくだ。
 部活にも入っていないから、授業が終わったら帰って家のことをして、夕飯、風呂、睡眠、そしてまた朝を迎えて――回り続ける同じ日々に、少しのスパイスでも欲しくなったのかもしれない。
 これが、姉の言う『やりたいこと』かどうかと問われたら、何とも言い辛いものではあるけれど。

『じゃあ、幽霊さん。何でこんなところで友達を探してるの?』

 字が汚い自覚はあるから、なるべく読めるように、丁寧に書いた。
 一回、二回と読み返して、客観的に見て読めることを確認してからノートを閉じた。
 何かぶらぶらと時間を潰していても良かったけれど、今日のところは、それだけで教室を後にした。



 その更に翌日。
 また、返信があった。
 もう当然のように、それはそこにあって、追記がされていた。

『幽霊なので、こんなところでしか、友達を探せないのです』

 質問に対する答えとしては、期待より随分と簡素なものだった。
 もっと、それらしい理由というか、なるほどと思えるような答えが欲しかった。

『こんなところって、ここ普通は立ち入り禁止でしょ? 警備員さんとでも仲良くしたかったの?』

 我ながら、何を聞いているのか。
 しかし――これにどう返してくれるのか、少し気にはなる。