決勝の相手は二組。
 先輩と姉のクラスは、見ている分には強かったが、それ以上に二組の仕上がり方が凄まじかった。
 十五分とは思えないその得点量は、まるで決勝で当たる俺たちへの威嚇のようでもあった。

 結果は――

「どりゃー! 邪魔じゃボケェ…!」

 と、二組の包囲網を掻い潜って決めた悟志のダンクが二点差を詰め、延長となった。
 それは球技大会では初めてのことらしく、延長を何分にするか、教師と運営生徒らで話し合いが持たれていた。今は、その待ち時間だ。
 気が付けば、ギャラリーもかなりの数が詰め掛けていた。

「凄いな悟志。お前、ダンクとか出来たんだな」

 身長は俺より少し高い程度で、百八十センチも無かった筈だ。

「俺も初めてやったわ。執念と怨念のダンクだな」

「何の恨みがあるんだよ」

「いや別に」

 間違いなく語呂と語感だけで言いやがったな。

「それよりマコ、負けだけは回避してやったぜ」

「何で俺に言うんだよ」

「先輩さんとの約束なんだろ。多分、俺がダンク決められたの、それが理由」

「……おう」

 悟志は、こういうやつだ。
 試合でもそれ以外でも、この性格には何度も救われた。

「――悟志、これ終わったら、今度カラオケ行こうな。あいつらも誘って」

「はは、言ったなこんにゃろ。オール付き合わせてやっから覚悟しろ」

「補導されない保証付きなら、喜んで行ってやるよ」

 小言に小言で返してやりながら、俺は患部に保冷剤を当て続けていた。

 十五分で勝てていれば――

 痛みは増強し、走り続けることは難しいかもしれない。
 それでもあと数分。それだけもってくれればいい。