九月中旬。
球技大会、当日。
「試合、頑張ってね」
優しい笑顔と共に渡されたお弁当を手に、俺は益々入る気合いと共に、体育館へと赴いた。
二週間。過ぎてみればあっという間だった。
ボールの感覚を取り戻すのは早かった。元々、凄くちゃんと打ち込んでいたから。
問題は体力面で、そもそもそんな期間だけで取り戻せるものかと不安はあったが、思ったより動けていたのは、日々ある体育の授業が繋いでくれていたのだろうか。
怪我を悪化させないよう、出来ることと出来ないことの取捨選択はさせてもらいながらも、ちゃんと出席しておいて良かった。
意外にも、自信さえある程だ。
先輩の存在も大きい。
そんな先輩の方はと言うと、出ないことは元々決まっていながら、体育祭側のリレーに欠員が出ており、誰か出てくれないかと先輩も持ち掛けられたらしいが、理解あるクラスメイトが身体のことを気遣って『何でもない』と断ってくれたらしく、改めて何にも出ないことが決まったようだった。
しかし――
「おうマコ、練習ん時はよくもやってくれたな」
「今日は全部はたき落としてやるから、覚悟な」
あれだけフレンドリーに迎え入れてくれた元チームメイトたちの、なんと血の気の多いことか。
整列待機中、一組と二組とは隣同士で、指を鳴らし首を鳴らし、トラッシュトークさながらの目力である。
「お手柔らかに頼むな。これでもブランク数年なんだから」
「そのブランク感じさせないくらいシュートバンバン決めやがったのは、どこの誰だ?」
「シュートは決まっても、運べなかったら意味ないけどな。ドリブルの感覚は、ちょっと仕上がり切らなかったんだ」
元々俺は、中継役の味方からパスを貰ってシュートを打つスタイルだ。一対一もたまにはやったけれど、それで抜き切れる程の力はなかった。
「まぁそこはほら、俺がアシストしてやんよ。全員ぶち抜いてボール回してやっから、肩の力抜いて打ちまくれな」
肩を組みつつそう言うのは、当然悟志だ。
その悟志こそ、中学時代俺にパスを回してくれていた奴だ。
うちのクラスは、他に中学時代やっていた一人、部活には入ってないが経験値のある一人、あとは数名の未経験者。
対する二組は、ほぼ全員が現役で固めて来た。それも、各ポジションがある程度揃っている。
正直なところ、勝算はない。
「えぐい差だけど、まぁそれを捲ってこそだよな、マコ」
「うん。ちょっと燃えてる」
闘争心というのも、久しぶりの感覚だ。
例年通りトーナメント形式で、ハーフコート二つを使って二試合同時に試合を進め、準決勝と決勝のみオールコートということになっている。
三年の先輩らも混ぜて進められるため、優勝というのは尚難しいそうだけれど――さらっと確認したところ、参加しているバスケ部員はあまり見当たらない。
不幸中の幸い、と言っていいかは分からないけれど、敵が少ないに越したことはない。
「まぁなんだ、青春の思い出作りって方が強い気はするよな。マコが参加するとは思わなかったし。来年は、俺も多分出ないからな」
悟志が、嬉しそうに言う。
怪我を機にバスケから離れた俺を、姉の次に気にかけていてくれたのは悟志だった。
中学時代、相棒同然のメンバーだった俺たちだ。思うところは、少なからずあるのだろう。
「勝つ気はもちろん満々だが、それより楽しんでこうぜ、マコ」
「おう。ボールじゃんじゃん回してくれな」
球技大会、当日。
「試合、頑張ってね」
優しい笑顔と共に渡されたお弁当を手に、俺は益々入る気合いと共に、体育館へと赴いた。
二週間。過ぎてみればあっという間だった。
ボールの感覚を取り戻すのは早かった。元々、凄くちゃんと打ち込んでいたから。
問題は体力面で、そもそもそんな期間だけで取り戻せるものかと不安はあったが、思ったより動けていたのは、日々ある体育の授業が繋いでくれていたのだろうか。
怪我を悪化させないよう、出来ることと出来ないことの取捨選択はさせてもらいながらも、ちゃんと出席しておいて良かった。
意外にも、自信さえある程だ。
先輩の存在も大きい。
そんな先輩の方はと言うと、出ないことは元々決まっていながら、体育祭側のリレーに欠員が出ており、誰か出てくれないかと先輩も持ち掛けられたらしいが、理解あるクラスメイトが身体のことを気遣って『何でもない』と断ってくれたらしく、改めて何にも出ないことが決まったようだった。
しかし――
「おうマコ、練習ん時はよくもやってくれたな」
「今日は全部はたき落としてやるから、覚悟な」
あれだけフレンドリーに迎え入れてくれた元チームメイトたちの、なんと血の気の多いことか。
整列待機中、一組と二組とは隣同士で、指を鳴らし首を鳴らし、トラッシュトークさながらの目力である。
「お手柔らかに頼むな。これでもブランク数年なんだから」
「そのブランク感じさせないくらいシュートバンバン決めやがったのは、どこの誰だ?」
「シュートは決まっても、運べなかったら意味ないけどな。ドリブルの感覚は、ちょっと仕上がり切らなかったんだ」
元々俺は、中継役の味方からパスを貰ってシュートを打つスタイルだ。一対一もたまにはやったけれど、それで抜き切れる程の力はなかった。
「まぁそこはほら、俺がアシストしてやんよ。全員ぶち抜いてボール回してやっから、肩の力抜いて打ちまくれな」
肩を組みつつそう言うのは、当然悟志だ。
その悟志こそ、中学時代俺にパスを回してくれていた奴だ。
うちのクラスは、他に中学時代やっていた一人、部活には入ってないが経験値のある一人、あとは数名の未経験者。
対する二組は、ほぼ全員が現役で固めて来た。それも、各ポジションがある程度揃っている。
正直なところ、勝算はない。
「えぐい差だけど、まぁそれを捲ってこそだよな、マコ」
「うん。ちょっと燃えてる」
闘争心というのも、久しぶりの感覚だ。
例年通りトーナメント形式で、ハーフコート二つを使って二試合同時に試合を進め、準決勝と決勝のみオールコートということになっている。
三年の先輩らも混ぜて進められるため、優勝というのは尚難しいそうだけれど――さらっと確認したところ、参加しているバスケ部員はあまり見当たらない。
不幸中の幸い、と言っていいかは分からないけれど、敵が少ないに越したことはない。
「まぁなんだ、青春の思い出作りって方が強い気はするよな。マコが参加するとは思わなかったし。来年は、俺も多分出ないからな」
悟志が、嬉しそうに言う。
怪我を機にバスケから離れた俺を、姉の次に気にかけていてくれたのは悟志だった。
中学時代、相棒同然のメンバーだった俺たちだ。思うところは、少なからずあるのだろう。
「勝つ気はもちろん満々だが、それより楽しんでこうぜ、マコ」
「おう。ボールじゃんじゃん回してくれな」



