土日を挟んだ、次の月曜日。
 ノートは無かった。

 その翌日も。
 ノートは無かった。

 その更に翌日――また翌日も。
 同じだ。ノートは無かった。

 彼女は、幽霊のままでいたかったのだろうか。
 それにしては徹していなかったように思う。
 あんなのでは、まるで『見つけて』とでも言っているかのようだ。

 ……いや。

 俺が、その真意を掴み損ねてしまったのかもしれない。
 ……事実、掴み損ねてしまったのだ。
 まだ何も――そう。姉から聞いた名前、それから字が綺麗だということ以外、彼女のことは何も知らない。知ろうともしなかった。
 知る必要がないと思っていた。

 けれど、今思えば……。

「友達になってくれ、なんて……」

 互いの何一つも知らずに、なれようものか。
 答えは否だ。
 友達、と口にするからには、互いに何か、そう思えるものがなければ成立しない。
 反対に、嫌だとすら思えなければ、友達でないと言うことさえ出来ない。
 ……なんていうのも、結局のところは、勝手な解釈だったのかもしれない。

 けれど。

 置き去りにしたって問題ない筈のノートを、彼女は持って帰ってしまった。
 それが、俺の考えることが間違いではないことの、そして俺の行動が間違ってしまったことの、何よりの証明だ。

 俺は、彼女の友達には、なれなかったのだ。