「今日から夏休みかぁ~!」

校門を出た瞬間、優鞠が思いっきり伸びをしながら声を上げた

午後の陽射しが強く、アスファルトの照り返しがじりじりと肌を焼くようだった

「やっと解放されたって感じだよね~。あの鬼みたいな期末テストから!」

「ほんとそれ。昨日までの自分、お疲れ様って言いたいよ」

花緋と純鈴も続いて話し、三人とも心底ホッとした表情をしている

心和はそんな様子を横目で見ながら、どこかまだ"慣れない"空気を感じていた

夏休みに入ったとはいえ、心和にとっては特別な予定があるわけでもなく、いつも通り静かに家に帰るだけのつもりだった

けれど、それを見逃すはずのない三人が、当然のように心和を囲む

「ねえねえ、せっかくの夏休みだし、みんなでどこか行かない?」

優鞠がキラキラした目で提案した瞬間、花緋がすぐに乗った

「いいね!夏っぽいことしたい!」

「海とかプールとか?」

「それもいいけど……私、遊園地とか行きたいな」

純鈴の一言で、みんなの視線が一気に心和へと集まった

「心和も、一緒にどう?」

急な誘いに、心和は一瞬言葉を詰まらせる

みんなと出かけるなんて、小学校の遠足以来かもしれない

「私……」

どうしよう、と迷う心和の横で、優鞠が軽く笑った

「海藤くんも言ってたよ?『心和が夏休みに一人でいるのは許さねぇ』って」

「……え?」

「だから、楽しい思い出作らなきゃ!」

「みんなで行こ!絶対楽しいから!」

三人の言葉に、心和の胸の奥がじんわりと温かくなる

「……うん、行く!」

そう答えると、三人は「やった!」と声を揃えて喜んだ

こうして、心和にとって"初めての友達との夏休み"が始まるのだった――