体育館の空気は、静かな緊張とほんの少しの寂しさで満ちていた

壇上で卒業証書を受け取る友達の姿を見つめながら、私はゆっくりと息を吸い込む

自分の番が近づいてくる

胸の奥がじんわりと熱くなって、ふと、帆向くんのことを思い出した

——帆向くんが生きていたら、どんな顔でこの日を迎えていただろう

「卒業、おめでとう」って、少し照れくさそうに笑ってくれたのかな

それとも、「心和は泣くなよ」って、からかってくれたのかな

考えるだけで、胸がぎゅっと締めつけられる

でも、今日は泣かない

私は——前を向くんだから



自分の名前が呼ばれる

一歩、一歩、壇上へと歩く

証書を受け取るとき、校長先生が微笑んだ

「おめでとう。これからの人生が、光に満ちたものになりますように。」

その言葉が、じんと心に響く

——これからの人生

帆向くんがいない未来

でも、私はきっと歩いていける

だって、帆向くんが背中を押してくれているから



***



卒業式が終わって、みんなが名残惜しそうに写真を撮り合っている

「心和!」

振り返ると、花緋ちゃんと優鞠ちゃん、純鈴ちゃん、心寧ちゃんが駆け寄ってきた

「卒業だね……!」

「実感、まだわかないなぁ。」

「みんなと離れるの寂しいよ……」

「でも、これからも会えるでしょ?」

「そうだけど……」

笑顔で話しながらも、みんなの瞳がどこか潤んでいる

卒業って、やっぱり少しだけ切ない

私たちは何度も「また遊ぼうね」と言い合いながら、最後の時間を惜しむように校門の前で立ち止まった

「じゃあ、またね!」

そう言って、みんなと別れた後——私は、一人で歩き出した

向かう先は決まっていた