それからの日々は、まるで夢の中にいるみたいだった

朝が来ても、夜が来ても、私には関係がなかった

教室に行っても、みんなが話している言葉は遠くに感じる

優鞠ちゃんが心配そうに声をかけてくれても、花緋ちゃんがいつものように明るく話しかけてくれても、私はただ微笑むだけだった

それが、私にできる精一杯のことだったから

帆向くんがいない現実に、私はまだうまく馴染めない

病院に通うことが日常だったのに、もうそこへ行く理由もない

私の手には何も残らなかった

彼の温もりも、声も、全部——

「……廣瀬」

ふいに、叶翔くんの声がした

気づけば放課後の屋上に立っていた

ここは、帆向くんと何度も話した場所

名前を呼んでくれた場所

そして——あの、夕焼けの日

「……叶翔くん」

彼の瞳は、まっすぐ私を見つめていた

「……お前が、そんな顔するのを望んでたと思うか?」

「……っ」

「帆向は、お前に生きてほしかったんじゃねぇのか?」

叶翔くんの言葉が、胸の奥に鋭く突き刺さる

生きてほしい

そんなこと、分かってる

でも、生きる意味を見失ってしまった

「……分かんないよ」

声が震える

「帆向くんがいないのに、どうして……どうして私だけ……!」

溢れ出した涙が止まらなかった

「俺たちがいるだろ」

叶翔くんは、そっと私の肩に手を置いた

「お前は独りじゃねぇよ」

独りじゃない——

それでも、私の心はまだ彷徨っていた

帆向くんがいた世界は、もう戻らない

でも——

「……心和ちゃん」

振り向くと、そこには優鞠ちゃん、花緋ちゃん、純鈴ちゃん、心寧ちゃんがいた。

みんな、泣きそうな顔をしていた

「私たちがいるよ」

優鞠ちゃんが、小さく微笑んだ

「だから……生きよう?」

その言葉に、私は初めて、泣きながら頷いた

帆向くんのいない世界を生きることが、今はまだ怖い

それでも——

私は、前に進まなきゃいけないんだ