——ピッ、ピッ、ピッ

病室に響く心電図の音が、次第に間隔を空け始める

「帆向くん……お願いだから、目を開けて……っ！」

私の声が震える

彼の手を握る力は、もうほとんど感じられない

「大丈夫……」

かすかな声が、唇から漏れた

「大丈夫……だから……」

何が大丈夫なの？

これからもずっと一緒にいるって、約束したじゃない

「嘘つき……」

涙が頬を伝い、彼の手の甲に落ちる

「帆向くんがいない世界なんて、嫌だよ……っ！」

彼のまぶたが、ほんのわずかに震えた

そして——

「……心和」

かすれた声が、私の名前を呼ぶ

私が知る限り、彼がこれほど弱々しく名前を呼んだことはなかった

「……ありがとう」

「——っ！！」

心臓が締めつけられる

彼の指先が、すべるように私の手を離れそうになった

「やだ……っ！置いていかないで！」

必死にしがみつく私に、彼は最後の力を振り絞るように微笑む

——その瞬間

「先生！心拍が——！」

ピーッ——

一定の音が、静寂の中に響き渡る

世界が、色を失った

誰かの叫び声が遠くで聞こえる

医者が、看護師が、慌ただしく動き回る

でも、私の目にはもう何も映らなかった

握りしめた彼の手は、ただ冷たくて——

「……っ」

声にならない嗚咽が、喉の奥で詰まる

「帆向くん……」

呼んでも、もう返事はない

涙が次々と溢れて、視界がにじむ

外では、桜が静かに舞っていた

まるで、彼の命が風に乗って消えていくみたいに——