放課後、心和はまだ少しぼんやりした頭を抱えながら、帆向と一緒に校舎を歩いていた

夢の中で見た小学校の記憶が、まだ胸の奥にくすぶっている

けれど、隣にいる帆向の存在が、その暗い気持ちをかき消そうとするかのように、明るく話しかけてきた

「なあ、廣瀬。今からちょっと寄り道しない?」

「……寄り道?」

「そうそう!ちょっと紹介したい人たちがいるんだよ」

帆向は屈託のない笑顔を浮かべながら、校庭の方向へと歩き出した

心和は戸惑いながらも、その後を追う

しばらく歩くと、中庭のベンチに三人の女子生徒が楽しそうにおしゃべりしているのが見えた

「おーい!お前ら!」

帆向が声をかけると、三人は同時に振り向いた

彼女たちは優鞠、花緋、純鈴──クラスの中でも特に仲の良いグループだった

明るくて活発な雰囲気の優鞠、にこやかな笑みを浮かべる花緋、そしてちょっと恥ずかしそうに微笑む純鈴

「帆向!何か用?」優鞠が元気よく言った

「うん、こいつを紹介したくてさ」

帆向はニヤリと笑いながら、心和を軽く押し出すように前に出した

突然のことに、心和の体がこわばる

「えっと……廣瀬、心和です……」

自分でも驚くほど小さな声だった

それでも、三人は優しく微笑んでくれた

「心和、だよね?初めまして!海藤からよく話聞いてたよ」花緋が柔らかく微笑んだ

「えっ、私のこと?」

「うん、海藤くん、よく言ってたよ。『お前らと合いそうなやつがいるんだ』って」

「そ、そんな……」

驚いて視線を帆向に向けると、彼は得意げに笑っていた

「だって、お前、こういうとこ来ないだろ?でも、ここなら楽しいと思うんだよな」

「……私が、ここにいてもいいの?」

「当たり前じゃん!」優鞠が笑顔で言う

「むしろ、どんどん話そうよ!」

純鈴も少し緊張しながら「私も……新しい友達ができるの、うれしい」とぽつりと呟いた

心和の胸の奥に、少しずつ温かいものが広がっていく

これが「友達」──

その感覚を、少しだけ知った気がした