病室の扉の前で、私はそっと手を握りしめた

中から聞こえてくる会話は聞き取れなかったけれど、叶翔くんが帆向くんに真剣に向き合っているのは分かった

——叶翔くん、ありがとう

私は静かにそう思いながら、扉が開くのを待った

しばらくして、病室のドアがゆっくりと開いた

「心和」

叶翔くんが出てきて、私を見つめる

「……話、終わった?」

「まあな」

彼は少しだけ笑って、私の頭をポンと軽く叩いた

「お前も、無理すんなよ」

「……うん」

「じゃあ、またな」

叶翔くんはそう言って、病室を後にした

私はそっと扉を開ける

「帆向くん……?」

ベッドの上の彼は、私の声にゆっくりと顔を上げた

「心和」

彼がそう呼ぶだけで、なんだか涙が出そうになった

「……何、話してたの?」

「……俺が、これからどう生きるのかって話」

帆向くんの声は、どこか穏やかだった

「これから……?」

「俺は、お前と一緒にいたい」

帆向くんはまっすぐに私を見つめる

「だから、最後まで……お前と笑っていたい」

「……っ」

涙が、溢れそうになる

「そんな顔しないで」

帆向くんは微笑んで、私の手を取った

「約束しよう。どんな時でも、最後まで笑っていよう」

「……うん」

私は震える声でそう答えて、そっと彼の手を握り返した

ふたりだけの、最後の約束だった——