病室の中は静かで、機械の電子音がかすかに響いていた
帆向くんはベッドに寄りかかるように座り、私の手を優しく握ったまま、静かに目を閉じている
その姿を見つめながら、私はそっと息を吐いた
「俺も……心和と、もっとたくさんの時間を過ごしたい」
そう言ってくれた彼の言葉が、今も胸の奥にじんと残っている
——どうか、この時間が少しでも長く続きますように
そう願いながら、私はそっと彼の手を握り返した
その時——
「……帆向」
病室の入り口から低い声が響いた
「叶翔くん……」
私はそっと振り返る
そこには、少し険しい表情をした叶翔くんが立っていた
「話がある」
「……俺に?」
帆向くんがゆっくりと目を開ける
叶翔くんは少しためらうように視線を落としたあと、意を決したようにこちらへ歩み寄った
「心和、少しだけ外してくれないか」
「え……?」
「すぐに終わるから」
彼の表情は真剣で、いつもの冗談めいた雰囲気は微塵もなかった
私は少し迷ったけれど、帆向くんが「大丈夫」と小さく頷いたのを見て、そっと席を立った
「……分かった。廊下で待ってるね」
そう言って、私は病室を出た
扉が閉まる音がして、病室には二人だけが残る
病室から二人の声が聞こえてくる
叶翔くんは、帆向くんのベッドのそばまで歩み寄り、静かに口を開いた
「お前さ……本当にこのままでいいのか?」
「……何が?」
「心和のことだよ」
帆向くんは少し目を伏せ、静かにため息をついた
「……俺は、心和と一緒にいたいよ」
「だったら、もっと強く生きろ」
叶翔くんの言葉は、鋭く、だけどどこか震えていた
「俺だって……俺だって、本当はお前に怒りたい
なんでこんなことになったんだって、悔しいよ
でもな、俺よりも……廣瀬のほうが何倍も辛いんだ」
「……分かってる」
「分かってない!」
叶翔くんが机を拳で叩いた
「廣瀬は、お前がいなくなったらどうするんだよ!
ずっと、お前を見守り続けて、それでも笑おうとして……そんな姿、俺はもう見ていられない!」
帆向くんは、叶翔くんの顔をじっと見つめる。
「……俺はさ、お前の親友だと思ってる」
叶翔くんの声が、少しだけ震えた
「だからこそ、もう一度聞く。お前は、このままでいいのか?」
帆向くんは静かに目を閉じ、少しの間黙ったままだった
やがて、深く息を吸い込んで、ゆっくりと目を開く
「……叶翔」
その目には、いつもより少しだけ強い光が宿っていた
「ありがとう」
短く、それでもはっきりとそう言った
叶翔くんは、少しだけ目を見開いたあと、ふっと力を抜いたように肩を落とした
「……ああ、ったく。本当に手のかかる親友だよ、お前は」
そう言って、小さく笑った
帆向くんも、ほんの少しだけ微笑んで——
その小さな笑顔が、ほんの少しだけ、未来への光を照らしているように思えた
帆向くんはベッドに寄りかかるように座り、私の手を優しく握ったまま、静かに目を閉じている
その姿を見つめながら、私はそっと息を吐いた
「俺も……心和と、もっとたくさんの時間を過ごしたい」
そう言ってくれた彼の言葉が、今も胸の奥にじんと残っている
——どうか、この時間が少しでも長く続きますように
そう願いながら、私はそっと彼の手を握り返した
その時——
「……帆向」
病室の入り口から低い声が響いた
「叶翔くん……」
私はそっと振り返る
そこには、少し険しい表情をした叶翔くんが立っていた
「話がある」
「……俺に?」
帆向くんがゆっくりと目を開ける
叶翔くんは少しためらうように視線を落としたあと、意を決したようにこちらへ歩み寄った
「心和、少しだけ外してくれないか」
「え……?」
「すぐに終わるから」
彼の表情は真剣で、いつもの冗談めいた雰囲気は微塵もなかった
私は少し迷ったけれど、帆向くんが「大丈夫」と小さく頷いたのを見て、そっと席を立った
「……分かった。廊下で待ってるね」
そう言って、私は病室を出た
扉が閉まる音がして、病室には二人だけが残る
病室から二人の声が聞こえてくる
叶翔くんは、帆向くんのベッドのそばまで歩み寄り、静かに口を開いた
「お前さ……本当にこのままでいいのか?」
「……何が?」
「心和のことだよ」
帆向くんは少し目を伏せ、静かにため息をついた
「……俺は、心和と一緒にいたいよ」
「だったら、もっと強く生きろ」
叶翔くんの言葉は、鋭く、だけどどこか震えていた
「俺だって……俺だって、本当はお前に怒りたい
なんでこんなことになったんだって、悔しいよ
でもな、俺よりも……廣瀬のほうが何倍も辛いんだ」
「……分かってる」
「分かってない!」
叶翔くんが机を拳で叩いた
「廣瀬は、お前がいなくなったらどうするんだよ!
ずっと、お前を見守り続けて、それでも笑おうとして……そんな姿、俺はもう見ていられない!」
帆向くんは、叶翔くんの顔をじっと見つめる。
「……俺はさ、お前の親友だと思ってる」
叶翔くんの声が、少しだけ震えた
「だからこそ、もう一度聞く。お前は、このままでいいのか?」
帆向くんは静かに目を閉じ、少しの間黙ったままだった
やがて、深く息を吸い込んで、ゆっくりと目を開く
「……叶翔」
その目には、いつもより少しだけ強い光が宿っていた
「ありがとう」
短く、それでもはっきりとそう言った
叶翔くんは、少しだけ目を見開いたあと、ふっと力を抜いたように肩を落とした
「……ああ、ったく。本当に手のかかる親友だよ、お前は」
そう言って、小さく笑った
帆向くんも、ほんの少しだけ微笑んで——
その小さな笑顔が、ほんの少しだけ、未来への光を照らしているように思えた



