週末の朝、私は病院の玄関前でそわそわしながら帆向くんを待っていた

外は冬の澄んだ空気に包まれていて、冷たい風が頬をかすめる。でも、それすらも心地よく感じた

「お待たせ」

病院の自動ドアが開き、ゆっくりと帆向くんが姿を現した

「帆向くん!」

私は駆け寄ると、思わず彼の手を握った

「……そんなに走るなって。転ぶぞ?」

「だって、久しぶりに外に出られるんだよ!嬉しくない?」

「まあ……そりゃな」

彼は苦笑しながらも、私の手をそっと握り返してくれる

病院の敷地を出ると、すぐ近くの公園に向かった

冬の公園は人が少なく、静かで、まるで私たちだけの特別な場所みたいだった

「寒くない?」

「ちょっと寒いけど……でも、こうして帆向くんと歩いてると、全然平気!」

「……バカ」

そう言いながら、彼はポケットから手を出して、私の指を包み込んだ

「えっ……?」

「冷たいだろ?」

「う、うん……」

帆向くんの手は思っていたよりも温かくて、ぎゅっと握られた指先から、じんわりと優しさが伝わってくる

「……どこに行きたい?」

「うーん……そうだ!久しぶりに海に行きたい!」

「海?」

「ほら、前にも一緒に行ったでしょ? あの時、帆向くん倒れちゃったから、ちゃんとした思い出にならなかった気がして……」

私がそう言うと、彼は少しだけ考え込むように視線を落とした

でも、すぐに小さく微笑む

「……そうだな!じゃあ、行くか!」

「ほんとに?」

「ああ。でも、無理はしないって約束しろよ」

「もちろん!」

そうして私たちは、久しぶりに二人であの海へ向かうことになった——