帆向くんの手が、そっと私の頬に触れる

冷たい風が吹き抜ける中庭で、彼の手のぬくもりだけが、はっきりと伝わってくる

「……心和」

また名前を呼ばれる

最近、帆向くんが自然に私の名前を呼ぶようになったことが嬉しくて

だけどそれ以上に、今の雰囲気がドキドキして仕方がなかった

「え?」

声を出すのも恥ずかしくて、小さく返事をする

帆向くんは、じっと私を見つめたまま、少しだけ目を伏せて、それからまた、まっすぐに私の目を捉えた

「お前と、こんな風にクリスマスを過ごせるなんて、思ってなかった」

「……私も」

「でも……これからも、こうして一緒に過ごしたいって、思った」

「っ……」

胸の奥が、ぎゅっと締め付けられる

私も、同じ気持ちだ

もっともっと、帆向くんと一緒にいたい

これからも、ずっと——

「だから……心和」

「……?」

「俺に、勇気をくれないか」

「勇気……?」

問い返した瞬間、帆向くんがゆっくりと顔を近づけてくる

次の言葉が何も出てこないまま、私はそっと目を閉じた

そして——

「……ん」

唇に、やさしい温もりが触れる

それは、とてもゆっくりで、確かめるようなキスだった

心臓が痛いくらいに高鳴って、息をすることすら忘れそうになる

帆向くんの手が、そっと私の頬を撫でる

それが、すごく愛しくて、私もそっと彼の服の袖を掴んだ

「……好きだよ」

キスの後、すぐそばで囁かれた言葉が、静かな夜に溶けていく

私も、同じ気持ちを伝えようとしたけど、恥ずかしくてうまく言葉にならなかった

だから代わりに——

もう一度、自分から帆向くんにそっと唇を重ねた

「……大好き」

それが、私からの精一杯の気持ち

病院の中庭に、冷たい風が吹く

だけど、私たちの間には、あたたかいぬくもりが確かにあった——