病室の扉を静かに開けると、白いカーテン越しに柔らかい朝の光が差し込んでいた

機械の規則的な電子音が静かな室内に響き、ベッドの上には——

「……帆向くん……」

私は小さく名前を呼んだ

変わらない、だけどどこか儚く見える横顔

呼吸は落ち着いている

でも、まだ眠ったまま——

「……おはよう」

——その時

かすかに唇が動いた

「えっ……?」

驚いて顔を上げる

「……おはよう、心和」

瞼が、ゆっくりと開く

琥珀色の瞳が、私を映していた

「……!」

涙が、一気に溢れた

「帆向くん……!」

声を震わせながら、私はベッドに駆け寄る

「良かった……ほんとに……っ」

「……泣くなよ」

弱々しく微笑む彼の手が、かすかに動く

私はそっとその手を握った

「当たり前じゃん……心配したんだから……!」

「……ごめん」

「……ううん……もういいの……!」

今、こうして目を覚ましてくれた

それだけで十分だった

「心和……ずっとそばにいてくれたのか?」

「うん……毎日来てたよ」

「……そっか」

帆向くんは、少しだけ目を細めた

「……ありがとな」

「ううん……っ、私のほうこそ、ありがとう……!」

私は涙を拭いながら、彼の手をぎゅっと握る

今、この手の温もりがあることが、何よりも嬉しかった

彼が生きていることが——

——私のそばにいてくれることが

「……これからも、ずっとそばにいるからね」

「……約束な」

帆向くんは、小さく微笑んで、私の手を握り返した

そのぬくもりが、胸の奥をじんわりと温めていく

二人で過ごす時間が、少しでも長く続くように——そう願いながら