図書館を出て、私は小走りで病院へ向かおうとしていた。

そのとき——

ブルルル……!

スマホが震える

画面には「お母さん」の名前

……嫌な予感がする

「もしもし、お母さん?」

『——心和……今どこ?』

「え?いま純鈴ちゃんと一緒だったんだけど、これから病院に向かおうと思って……」

『……落ち着いて聞いてね』

お母さんの声が、いつもより静かだった

『帆向くんの容態が、少し悪くなったの』

「……っ!」

一瞬、呼吸が止まる

『急に熱が上がって、息苦しさを訴えて……今はお医者さんが診てくれてるけど……』

「今、どうなってるの!?」

『さっき処置が終わって、少し落ち着いたみたい。でも——』

お母さんは一度言葉を切った

『……しばらく、面会制限がかかるかもしれない』

「え……?」

『詳しいことは、病院で先生の話を聞いたほうがいいと思う。でも、心和——無理だけはしないでね』

「……うん」

私は、ぎゅっとスマホを握りしめる

無理しないで——なんて言われても、できるわけがない

帆向くんが苦しんでるのに

帆向くんが、頑張ってるのに

「……すぐ行く」

そう言って、私は走り出した

帆向くんの元へ——たとえ面会できなくても、そばにいたかったから