週末

私は、純鈴ちゃんと一緒に小さな図書館へ向かっていた

「緊張する?」

「……うん、少し」

本を持つ手が、ほんの少しだけ汗ばんでいる

「大丈夫だよ!みんな本好きの人たちばかりだから、優しいし、無理に話さなくてもいいの」

「そっか……」

そう言われても、やっぱり少しだけ緊張する

読書は好きだけど、感想を人に話す機会なんてあまりなかった

それに——

私、今、病院にいなくていいのかな……

ふとそんなことを考えてしまう

だけど、純鈴ちゃんの「自分の時間も大切にして」という言葉を思い出して、私はそっと息を吸った

「——よし」

「え?」

「せっかく来たし、楽しんでみる!」

「うん!」

純鈴ちゃんが嬉しそうに笑う

***

図書館の中は、静かで落ち着いた雰囲気だった

本棚の間を歩きながら奥の部屋へ向かうと、すでに何人かが集まっていた

「純鈴ちゃん、おはよう!」

「あ、優月さん!おはようございます!」

「今日はお友達を連れてきてくれたのね」

優しそうな女性が私に微笑む

「初めまして、望月心和です」

「心和ちゃんね、よろしく!気楽に楽しんでね」

「はい……!」

そう言って席に着くと、なんだか少し緊張がほぐれた

机の上には、それぞれが持ってきた本が並んでいる

「じゃあ、今日は新しく来てくれた心和ちゃんもいるし、自己紹介と今日持ってきた本の話をしようか」

***

読書会は、思ったよりもずっと楽しかった

最初は緊張していたけれど、みんなが穏やかに話をしてくれるから、自然とリラックスできた

私が持ってきた本の話をすると、何人かが興味を持ってくれて嬉しかった

「この表現、すごく素敵だね!」

「それ、私も読んでみたいな」

そんな風に言われると、なんだか胸がじんわりと温かくなる

(本を通して、人とつながるのって、すごく素敵なことなんだな……)

***

読書会が終わった帰り

私は、どこかすっきりとした気持ちで歩いていた

「楽しかった?」

純鈴ちゃんが横で微笑む

「うん!最初は緊張したけど、行ってよかった」

「よかったぁ!」

「……ありがとうね、純鈴ちゃん」

「ふふっ、どういたしまして!」

私はふっと笑いながら、ふとスマホの画面を見た

お母さんから、さっき着信があったことに気づく

……何かあったのかな?

胸の奥に不安が広がる

「純鈴ちゃん、ごめん!ちょっと病院に寄ってくる!」

「えっ……うん!気をつけてね!」

私は急いで病院へ向かう

帆向くんが——待っている気がするから