静まり返る病院の廊下に、緊張感が漂っていた

私たちは手術室の前でただ立ち尽くす

赤く光る「手術中」のランプが、時間の経過を無情に示していた

——どうか、助かって

何度も心の中で願うけれど、祈ることしかできない自分が悔しかった

「……どうして、こんなことに……」

優鞠ちゃんが涙を拭いながら呟く

「海藤……大丈夫だよね……?」

花緋ちゃんが震える声で言うと、純鈴ちゃんがそっと手を握った

「信じよう。今は、先生たちに任せるしかない……」

心寧ちゃんも不安そうに拳を握りしめ、叶翔くんは俯いたまま何も言わない

その沈黙を破るように、手術室の扉が開いた

「——海藤帆向さんのご家族の方」

現れたのは、手術を終えた医師だった

「帆向は……息子は、どうなったんですか!?」

海藤くんのお母さんが震える声で問いかける

「手術は無事に終了しました。現在、集中治療室(ICU)で経過を見ています」

「本当ですか!?」

「ただし——」

先生は少し表情を曇らせる

「彼の病状について、お話ししなければならないことがあります」

その言葉に、私の心臓が締めつけられた

「……病状?」

「はい、彼は以前から心臓の疾患を抱えていました。進行性のもので、長期間の治療が必要な状態です」

「……そんな……」

海藤くんの親御さんが肩を落とす

「ですが、今回の処置で容体は安定しています。今後の治療については、ご家族と相談しながら決めていきましょう」

「よかった……」

私は思わず膝から崩れ落ちそうになった

助かったんだ——海藤くんは

それだけで、涙が溢れそうになる

「面会はできますか?」

叶翔くんが真剣な表情で尋ねる

「ICUにいるため、今はご家族のみです。ただ、状態が落ち着けば面会できるようになります」

「そっか……」

みんなが肩を落とす中、私は無意識に胸元をぎゅっと握りしめていた

——海藤くん、話したいことがあるんだよね?

あの海で、伝えようとしてくれたこと——

それを、私はちゃんと聞きたい

だから、お願い

「早く元気になって……海藤くん……」

私はそっと呟いた——